小規模事業者・小規模法人の社長・経理の方に役立つ効率化方法や経理の基礎知識をご紹介します。何か一つでも参考になれば、実際に試してみてください。
会計入力の効率化について
会計ソフトへの入力作業は付加価値を生まない仕事となります。できるだけ効率化し、付加価値を生む別の仕事(ex.各種分析、キャッシュフローを高める計画立案、等)に時間を費やしましょう。また、従業員による不正が起こりにくい環境を整備することも可能ですので、効率化への取り組みは必須だと思われます。
現金支出入を可能な限り減らす
現金で売掛金の回収をしたり、現金で経費の支払をしてしまうと、日付・金額・相手先情報を手入力せざるを得えなく、会計入力の自動化がすすみません。 また、同業で現金やり取りが少ないにもかかわらず、その会社だけ現金やり取りが多いと、税務署から不要な疑いをかけられる可能性も高くなります。 さらに、従業員の現金による支出入を許可すると、従業員の不正を誘発する可能性が高くなります。 普段真面目な従業員でも魔が差すということはあり得るので、お互いのために不正が起こりにくい環境づくりを推進するほうが望ましいでしょう。
現金支出入を減らすためには、次の取組が有効です。
- 経費支払にクレジットカードを利用する(⇒取引をクレジット明細としてcsv取得できる)
- 口座引落にする(取引を普通預金の取引明細としてcsv取得できる)
- 振込支払にする(取引を普通預金の取引明細としてcsv取得できる)
どうしても発生してしまう現金支出入は現金出納帳Excelに必要事項を入力し、それを会計ソフトへインポートするのが効率的です。インポート対応の現金出納帳Excelについては、「現金出納帳Excel」をご参照ください。
従業員の立替経費は会計ソフトへ直接インポートできる経費精算書Excelを使用してもらう
小規模法人の場合、全従業員に法人カードを持たせることはなかなか難しい場合が多く、従業員が経費を立替えるケースも発生すると思われます。その際は、月に一度経費精算書Excelを提出してもらい、振込清算するのが効率的です(従業員が立替経費の支払にクレジットカードを使用すれば、従業員が現金を前払する必要もありません)。 各従業員から提出された経費精算書Excelは経理が領収書内容と照合後、会計ソフトへインポートできるようにしておきます。 インポート対応の経費精算書Excelは「経費精算書Excelについて」をご参照ください。
普通預金の取引履歴を会計ソフトに取り込む
普通預金の取引履歴を会計ソフトに取り込むためには、①ネットバンキングと会計ソフトを連動させる、②ネットバンキングから出力したcsvを取り込む、方法があります(インポートしてもいいですが、少し手間です)。
①の連動させる方法の方が楽なのですが、金融機関側のマイナーチェンジ時などに不具合が生じることがあるなど、ストレスになるときがありますので、私は②の方法でやることが多いです。 詳細は「会計ソフトへスマート取込する方法」をご参照ください。
※支払手数料が別建てになっているネット銀行・北海道銀行等だと取込後の修正作業が少なく済みます。
クレジット明細を会計ソフトに取り込む
クレジット明細を会計ソフトに取り込むためには、①会計ソフトとクレジットカード会社を連動させる、②クレジット明細を会計ソフトへインポートする、③クレジット明細をcsv取込する、方法があります。 会計ソフトの未払金残高管理の面を考えると、②又は③の方法がお勧めにはなります。 詳細は「クレジットカードの取引履歴の入力方法」をご参照ください。
給与明細Excelと会計ソフトへのインポート方法
現在整備中
支払・請求書発行・売掛管理の効率化
各取引先への支払いや納税、請求書の作成・送付、売掛管理も付加価値が生まれる作業ではないため、できるだけ効率化しましょう。
請求書の送付方法はメール送付又はweb郵便が便利
費用・手間を考えると、請求書はpdf印刷し、それをメール送付するのが一番効率的です。 ただ、相手先によっては紙の請求書が必須となり、その場合、Web郵便を利用するのが効率的です。 web郵便では、作成した請求書pdfをアップロードし、差出人・宛先を入力するだけで郵便局が請求書の印刷・郵送の業務を代行してくれます。料金も1通99円(税込)と割安です。
※2021年10月14日追記:2022年1月からメール受送信する請求書等の保存方法が変わります。詳細は「電子帳簿保存法改正について」をご参照ください。
源泉所得税・法人税等・消費税のクレジット納付又はダイレクト納付
国税(源泉所得税・法人税・地方法人税・消費税)はオンライン上でクレジット納付が可能です(詳細は「法人税・消費税のクレジット納付方法について」をご参照ください)(クレジット限度枠によってはダイレクト納付で口座引落にしてもいいかもしれません)。 地方税(法人道民税・法人市民税)はクレジット納付はできませんが、オンライン上でダイレクト納付することはできます(こちらも詳細は「法人市民税・法人道民税をネット上で支払う」をご参照ください)。 わざわざ金融機関に行かなくても納付でき、普通預金の取引履歴又はクレジット明細に記載されるので便利です。
源泉所得税と住民税(特別徴収)の納期の特例
源泉所得税と住民税(特別徴収)の納付は毎月が原則ですが、常時従業員が10名未満の場合、申請により年2回の納付に変更することができます。 毎月納付は手間なので、要件に該当する場合、納期の特例の申請をしましょう。
請求書作成と売掛管理
請求書作成と売掛管理は業種・規模・取引先数によっては専用ソフトを使用したほうが効率的かもしれません。 ソフトによっては普通預金の取引履歴を取得することで、売掛金の消込作業を自動化しているものもあります。 ただ、多くの小規模法人ではExcel管理で問題ないと考えられます。Excel管理のほうが動作が早く、汎用性が高く、費用もかかりません。 近いうちに参考になるExcelファイルをご紹介する予定です。
領収書は月ごとにまとめ、振込作業は月に一度まとめて行う
領収書は月ごとにまとまっていれば、わざわざ用紙に貼り付ける必要はないと思います。 支払方法(現金支払、クレジット支払など)毎にまとまっていたほうが確認が楽でいいと思いますが、あとは月ごとに紙の袋に入れておけば十分です。 また、当然ですが、各取引先に対し自社の締日を伝え、各取引先から送られてくる請求書の振込は月に一度まとめて行うべきです。
一人社長・小規模法人の経理が知っておくべき基礎知識
税金・社会保険関連のスケジュールと納税方法
社長・経理の方でしたら、税金・社会保険等の納付スケジュールを知っておくことは必須です。下記内容を把握しておきましょう。
- 源泉所得税・住民税(特別徴収)
源泉所得税と住民税(特別徴収)は原則毎月納付が必要です。但し、従業員10名未満で特例申請をしている場合、年2回の納付となります。源泉所得税の場合、7月から12月分を1月20日に、1月から6月分を7月10日に納付することとなり、住民税(特別徴収)は6月から11月分を12月10日、12月から5月分を6月10日期限で支払うこととなります。
- 法人税等の確定納付
課税事業年度終了の日から2か月以内に法人税・地方法人税・法人市民税・法人道民税・消費税の確定額を納付する必要があります。例えば1月決算の法人であれば、3月末日が納付期限となります。
なお、国税(法人税・地方法人税・消費税・源泉所得税)はオンライン上でクレジット納付が可能で、ダイレクト納付は地方税(法人市民税・法人道民税・住民税(特別徴収))でも可能です。 納付手続きだけのために金融機関に行くのは効率が悪いので、オンライン上で納付しましょう。
- 法人税等の中間納付
前事業年度の法人税額が20万円超の場合、法人税・地方法人税・法人市民税・法人道民税の中間納付が必要です。納付時期は確定納付時期の6か月後、納付額は通常前事業年度の納付額の概ね半額です。
消費税の中間納付は少し複雑で、前事業年度の消費税の納付額に応じて、納付回数が1回(納付時期は確定納付時期の6か月後)・3回(納付時期は確定納付時期から3か月毎)・11回(納付時期は確定納付時期から1か月毎)に分類されます。消費税の中間納付の要件
申告回数 国税48万円以下 0回 国税48万円超400万円以下 年1回 国税400万円超4,800万円以下 年3回 国税4,800万円超 年11回 - 年末調整・法定調書等・償却資産申告
年末調整事務は12月給与に反映させるのが原則となるため、12月給与支給日までには完了させる必要があります。法定調書等・償却資産申告は1月末日が提出期限となります。
- 労働保険料の年度更新手続き
労働保険の年度更新手続きの提出期限は6月1日から7月10日となります。
- 健康保険・厚生年金保険月額報酬算定基礎届
算定基礎届は1年間の社会保険料を決めるための手続きとなり、毎年7月1日から10日が提出期限となります。
会計ソフトへの入力方法と残高確認・月次損益の比較方法について
ボリュームが多くなったので別記事にしました。「会計ソフトへの入力方法と残高確認・月次損益の比較方法について」をご参照ください。
Excelの基礎機能
ひとり社長又は経理の方であれば、ピボットテーブル機能で各営業担当の売上・粗利の分析などができるようになるといいと思います。「Excelを使って担当者毎、現場毎の粗利益をきちんと把握しましょう」で一例を紹介しているのでご参照ください。
また、「VLOOKUP関数」も汎用性が高いため、余裕があれば「コスパ最高のVLOOKUP~一度覚えれば応用範囲が広い」をご参照ください。
その他、小数点以下を切り捨ててくれる「INT関数」や指定した桁数に切り捨てる「ROUNDDOWN関数」も使用する場面が多いと思われますので、Googleで検索してみてください。
銀行評価を高める決算書作成について
法人の決算書は顧問税理士が作成することになると思われるため、顧問税理士の協力も必要になりますが、社長・経理の方は銀行評価を高める決算書について知っておいたほうがいいです。「銀行評価について」をご参照ください。