起業、開業した小規模事業者・小規模法人の経営者向けに銀行評価について記載します。低金利で十分な融資を受けることは企業の持続的な成長のために欠かせない要素であることが多いです。経営者の方は銀行の評価方法の基本=ルールを知ることにより、自社でできる対策を取り、有利な条件を引き出しましょう。顧問税理士に丸投げでは危険です。なぜなら銀行評価に詳しくない税理士が多いからです。

プレゼン力は関係ない?銀行評価の基本

起業、開業した経営者の多くがプレゼンに自信を持っています。自分でビジネスを立ち上げた経験によるところもあるかもしれません。しかし、銀行には営業トークがほとんどききません。銀行は企業を信用格付により区分した上で融資条件を決め、信用格付は8割方決算書により決定されるからです。経営者の方はまずこの事実を認識しましょう。

なぜ銀行は企業を信用格付により評価するのか

金融庁の方針です。金融機関が逆らうことはできません。ましてや、支店の担当者レベルではどうしようもありません。「銀行評価は信用格付により決まる」、これはもうそういうものだと受け入れましょう。

信用格付が低いと融資を受けられない理由

信用格付は12段階前後に区分されており、その区分により更に正常先・要注意先・要管理先・破綻懸念先・破綻先に債務者区分されます。そしてその債務者区分により貸付先に対する貸倒引当金を計上する必要があり、要管理先以下の場合、貸倒引当率が10%以上となります。経営者であれば貸倒引当金はご存じの方が多いと思いますが、期末債権(売掛金・貸付金等)に対し回収可能性に応じ一定額を費用・負債として計上する内容です。金融機関が要管理先に貸し付けをする場合、下記流れでしょうか。

要管理先に1000万円を金利5%で期中据置で貸付けた場合

収入:金利50万円(=1000万円×5%)
費用:貸倒引当金繰入100万円(=1000万円×10%)
損益計算書上の損益:▲50万円(=50万円▲100万円)

上記はかなり簡素化した計算ですが、ご覧の通り、なんと要管理先以下に貸し付けをする場合、5%の金利であっても貸し付けをした瞬間から金融機関は赤字になってしまうのです。また、銀行は守るべきBIS規制(自己資本比率の縛り。つまり、負債を多く抱えられない。)があります。上記内容を考えれば、信用格付が低い企業が融資を受けられない理由が理解できるのではないでしょうか。

信用格付のタイミングは

信用格付は8割方決算書により行われます。そのため、格付けのタイミングは次の2通りです。

  • 初めて融資を受けるとき
  • 新しい決算書が提出されるとき

基本的に決算書は過去3年分を見ます。一度提出した決算申告書は以降3年間の信用格付に影響し、少なくとも1年間は格付評価が更新されないことを認識しておきましょう。

格付け評価を高くするためにはどうすればいいか

信用格付は決算書によりほぼ決定されますが、対策がとれないわけではありません。というより、ちょっとした工夫で評価を大きく変えることが可能です。信用格付のプロセスを知った上で、対策方法も把握しましょう。

信用格付のプロセス

信用格付のプロセスは下記3段階となります。ご覧の通り、ほとんど一次評価で決まります。一次評価は財務スコアリングモデルによる自動評価であるため、経営者のプレゼン力は比重10%の二次評価の一部にしか反映されません。

  1. 一次評価(定量評価、スコアリング。比重70~90%。):3期分の決算書データからの客観的評価

  2. 二次評価(定性評価。比重10%前後。):業界の動向、経営者能力等への主観的評価

  3. 三次評価(実態調整。比重10%前後。):不良資産等の実態評価

一次評価の仕組みから考える信用格付に有利な決算対策

一次評価は収益性評価・安全性評価・返済能力評価の3つに分類されます。最終的な損益を変更することは当然できません。ただ、会計上の枠組みの範囲内で、一次評価に有利な決算書を作成することは可能です。経営者の方は下記の対策内容が行われているのか、決算書提出前にチェックしましょう。そして、必要に応じて顧問税理士に作り直してもらう必要があるでしょう。

場所 対策内容
収益性評価
(比重30%)
損益計算書
(上の数字をよくする)
  • リベート収入を雑収入ではなく売上原価のマイナスに振り替える
  • 可能な限り雑収入関連を売上又は売上原価へ振り替える
  • 可能な限り販管費項目を特別損失に振り替える
  • 特別償却等は会計上反映させず申告書で別表調整する
安全性評価
(比重40%)
貸借対照表
  • 長期の債務を流動負債ではなく固定負債に計上する
    (預かり敷金、役員借入金等)
  • 倒産防止共済を会計上資産計上する
  • (あまりお勧めしませんが)決算時に個人保有の現預金を法人口座に入金する
    ※役員借入金は銀行評価上、債務よりも資本金のような扱いを受けるため、理論上評価は高くなります。決算期が異なる別法人から、一時的に現預金を送金する強者も中には存在します。
返済能力評価
(比重30%)
貸借対照表
  • 可能な限り未収入金から売掛金に振り替える
  • 可能な限り買掛金から未払金に振り替える

残念ながら、倒産防止共済が資産計上されていない、預かり敷金・役員借入金が流動負債に計上されている決算書を見る機会がよくあります。税法上おかしい点はないのですが、銀行評価を考えると落第点です。仕方ありませんので、経営者の方は顧問税理士に自分から指摘してみましょう。