不動産投資家の法人成りのタイミングはいつか
個人で所有している不動産の規模がある程度大きくなった段階で、法人に移すことによる所得分散を一度検討されるといいと思います。どのタイミングが最適であるかは一概には言えません。個人よりも法人のほうが節税や課税の繰延の手段が多いことから、個人の所得が600万円を超えれば法人に移したほうがいいという税理士もいます。また、法人で発生する法人税・地方法人税等の税率が約23%であること(所得800万円以下を想定)を考えると、個人の所得税率が33%、住民税と合わせると43%となる所得900万円以上であれば間違いなく法人に移したほうがいいという税理士もいます。
ただ一方で、所得分散のために法人を設立した場合、法人設立に関する各種届出書、法人特有の各種手続きがあり、ある程度の手間、コストが発生することは念頭に置いてください。個人の確定申告は自己申告されるケースが多いと思いますが、法人の申告は個人の確定申告よりも難易度が高いため、一般的には税理士へ依頼するケースがほとんどであり、税理士報酬が発生することも事前に考慮したほうがいいです。
個人から法人へ不動産を売却して消費税還付を行う
2020年6月7日追記:賃貸アパートの不動産消費税還付は2020年9月末日で原則できなくなります。
法人成りの際も消費税還付は選択肢のうちの一つとして検討しましょう。
第三者から新築または築浅物件を購入する際に用いられることが多い不動産の消費税還付ですが、一定のスキームを使えば個人で所有する不動産を法人に売却することにより建物金額の消費税額の還付を受けることができます。2019年10月以降は消費税率が10%となる予定であるため、10%の還付額は大きな魅力です。
ただし、個人から法人に不動産を売却する際は次の点に注意しましょう。
- 抵当権が設定されている場合、銀行の許可が得られるかどうか
- 法人が個人から不動産を購入した場合でも不動産取得税、登記費用が発生し、金融機関によっては高額のローン手数料も発生するため、それらの費用に見合うメリットがあるかどうか
- 売買金額は基本的には時価で行う必要があり、時価の2分の1未満の売買であると判断されればみなし譲渡の規定により、個人に思わぬ譲渡所得税(時価で売却したものとして課税されます)が発生する可能性があるなど、金額算定は慎重に行う必要があること
上記条件をクリアできれば、あとは一般的な消費税還付とやり方は変わりません。適正な売買金額の算定や法人設立後の消費税関連の税務を考えると、なかなか個人投資家が自分でスキームを考え、実行することは難しいと思いますが、費用対効果が高ければ税理士に依頼してでも法人成りを検討してみてもいいと思います。
個人的には、還付後3年間の税務は税理士に依頼し、その後は自分で申告することを目指すのもありだと思います。個人の確定申告よりは難易度が高いですが、消費税申告がない不動産保有法人であれば、税務の論点も少ないため、3年間税理士にいろいろなことを質問しておけば、個人でも十分申告可能です。
今後は税理士業界も毎年自動更新の顧問契約ではなく、面談時間等に応じたコンサルティング報酬といった形態が増えていくと考えられます。自分でできるところは自分でやり、調べてもわからない部分や税務リスクが高い高度な節税手法等を教えてもらうために税理士を利用するのが、賢い使い方なのかもしれません。個人開業後はぼくも不動産投資家の自己申告を全力で支援したいと思うので、お困りの際は是非お問い合わせください。