建物を売却したことがない方、消費税還付を受けないでアパート経営をされている方の中にはアパート経営に消費税は関係ないと思っている方がいるようです。特にご自身で確定申告をされている個人事業主の方にその傾向が強いようです。(ぼく自身も税理士の勉強をするまでは関係ないのかと思っていました。)

 確かにアパートの賃料収入は消費税の非課税売上であり、その他にテナントによる不動産所得・事業所得等がない場合には消費税申告は中々縁がないかもしれません。ただ、アパート事業であっても、いくつかの条件に合致する事業年度は消費税の納税義務が生じます。そして、そのタイミングで、例えば建物の売却等で多額の課税売上を計上してしまった場合、多額の消費税の納税義務が生じてしまうなど、取り返しのつかないことになってしまいます。ですので、不動産投資家の方も、どのような場合に消費税の納税義務が生じるかは最低限おさえておきましょう。

消費税の免税事業者

 不動産投資家の方は、下記の①②の両方を満たす場合が消費税の免税事業者であるとまずは認識してください。

①基準期間における課税売上高が1000万円以下であること

②特定期間の課税売上高又は支払い給与額が1000万円以下であること

 消費税課税事業者選択届出書を提出している場合は上記①②を満たしていても免税事業者にはなりませんが、個人事業主の個人投資家が単独でその届出書を提出することは考えにくいため、個人事業主の不動産投資家であれば、上記①②を免税事業者の要件と考えていいと思います。

※個人事業主ではなく法人の場合も基本的には上記理解でいいのですが、事業期間が12か月でない場合等は多少複雑化するため、詳細は機会があれば別記事で掲載しようと思います。ただ、法人の場合、税理士が絡んでいるケースがほとんどなので、税理士が教えてくれるはずです。

課税売上高とは

 課税売上高とは消費税が課税される売上のことで、非課税売上高とは消費税が課税されない売上となります(その他に不課税売上もありますが、ややこしくなるので省略します)。取引明細や請求書・領収書等に消費税の記載があれば、それは債権者の課税売上高です。事業者の場合、小売業でも卸売業、製造業でも一般的に売上は課税売上です。ただ、不動産投資家の方ですと、テナント収入は課税売上ですが、居住用の賃貸収入は非課税売上になります。これは住まいの安定化という国の政策によるものです。住まいの安定化が目的なので、民泊業やウィークリーマンション等は非課税売上ではなく、課税売上となります。ややこしいですが、住まいの安定化につながる長期契約(1か月以上)の居住用賃貸収入は非課税売上と覚えておきましょう。

 さて、この考えでいくと、賃貸用アパートのみを保有している個人投資家の場合、非課税売上の家賃収入しかないので、そもそも課税売上1000万円以上になることがないと思われるかもしれませんが、不動産を売却した際の建物に対応する売上(=収入)が課税売上に該当するため、不動産を売却した際が要注意です。またややこしいですが、建物とセットで売却する土地は、家賃収入と同じ非課税売上となるため、セットの販売価格を建物と土地で按分し、建物に対応する部分が1000万円以上となっていないか、注意してください。

(第三者との取引で、契約書に土地・建物の内訳額の記載があれば基本的にはその金額となります。ない場合は、固定資産税評価額等の合理的な按分となりますが、ここまでの話になると税理士に依頼したほうがいいかもしれません。)

基準期間について(個人事業主の場合)

 個人事業主の場合、先ほどの①における基準期間における課税売上高は、前々事業年度の課税売上高をいいます。ですので、2017年の非課税売上である家賃収入・共益費以外で、課税売上である駐車場収入・建物の譲渡収入等の合計額が1000万円以下であれば、2019年の確定申告では①の要件をクリアします。

 また、2018年から事業を開始している場合、2017年の課税売上はないので、その場合でも2019年確定申告では①の要件をクリアしていることになります。

特定期間について(個人事業主)

 個人事業主の場合、先ほどの②における特定期間における課税売上高は、前事業年の1月から6月までの課税売上高をいいます。ですので、2018年の上期の課税売上である駐車場収入・建物の譲渡収入等の合計額が1000万円又は従業員に支払った給与額が1000万円以下であれば②の要件をクリアします。

 不動産事業の場合、従業員がいるケースは少ないため、②の要件は基本的にクリアできると思います。

一昨年建物を売却したことにより課税事業者になっていたにも関わらず、また建物を売却してしまうと、確定申告時に思わぬ消費税の支払が生じます。特に消費税の納税義務を把握していない場合は簡易課税制度の適用も申請していないケースが想定されるため、消費税の納税義務については慎重に把握しましょう。