不動産保有法人による消費税還付に興味がある不動産投資家向けの記事となります。

最北の大地より

 今回は消費税還付を行う際に重要で、スキームの80%ほどのウェイトを占めている、①課税事業者となる、②全額控除、③3年間の通算課税売上割合、についてご説明いたします。これを読めば消費税還付の概要をつかむことができると思います。

2020年6月7日追記:賃貸アパートの不動産消費税還付は2020年9月末日の引き渡し(2020年3月末日までに契約している場合は建物引き渡し日の期限なし)を最後に使えなくなりました。テナントや民泊用物件については今後も可能です。

消費税還付スキームのおさらい

 消費税の世界は特例が非常に多く、税理士にとってもややこしい税法となっています。還付金等を巡る国と税理士との攻防により、どんどん複雑になっています。

 ただ、消費税の原則的な考え方は、消費税の課税事業者である事業者が売上で受け取った消費税額から仕入にかかった消費税額を控除した消費税額を国に納付する、という内容です。そして消費税還付の基本は、不動産購入事業年度の建物にかかった高額の消費税額が、売上で受け取った消費税額から控除しきれず、その控除しきれなかった金額を消費税申告により国から還付してもらう、という内容となります。

 そのシンプルな構造が国税庁と税理士との攻防により複雑化していますが、大きなポイントは下記となります。

  • ①建物引渡し事業年度に課税事業者となっていること
  • ②建物引渡し事業年度の課税売上割合を95%以上とすること(=全額控除)
  • ③3年間の通算課税売上割合を50%以上にすること

課税事業者となる

 消費税は全ての事業者に対して課されるわけではなく、免税事業者と課税事業者があります。免税事業者とは、簡単に言えば2期前の課税売上が1000万円以下の事業者のことです。また、新設法人の場合は2期前の決算書がないため、やはり免税事業者となります。

 アパート投資の消費税還付は基本的に法人を設立し、法人で不動産を購入するケースがほとんどですが、新設法人の場合はそのままですと免税事業者となり、免税事業者の場合、当然消費税を納める義務もなければ還付を受けられる権利もありません。そのため、新設法人の場合、設立事業年度の末日までに消費税課税事業者選択届出書を税務署に提出し、課税事業者となる必要があります。この届出書を期日までに提出しなければ、当然消費税還付を受けることはできません。

非課税売上に対応する課税仕入れとは

 消費税の原則的な考え方は先ほど述べた通り、売上で受け取った消費税額から仕入にかかった消費税額を控除し、その差額を国に納付する(又は還付を受ける)といった流れです。ただ、消費税法は複雑で、特に賃貸アパートを購入した場合、通常であれば建物に係る消費税額は仕入れにかかった消費税額として控除することができません。

 なぜか。難しい表現で言えば、非課税売上に対応する課税仕入れは原則控除できないこととなっているためです。

 非課税売上とは国の方針により消費税を納税する義務のない売上のことです。身近な取引で言えば、土地の売買、株式の売買、学校の授業料、居住用物件の賃借料、があります。上記内容の請求書や領収書がお手元にあれば、消費税がかかっていないことを確認してみてください。「消費」という言葉がなじまない、又は社会政策上の配慮からそう決められています。

つまり、居住用の家賃収入(テナント収入は課税売上です)は非課税売上となっており、原則賃貸用アパートに係る消費税額が高額であっても控除できないこととなっているのです。(そもそも取得事業年度で課税事業者となっている必要がありますが、その件は別の機会にご説明します。)

 ただし、非課税売上に対応する課税仕入れを例外的に控除する方法もあります。それが全額控除です。

全額控除とは

 全額控除とは、課税売上割合が95%以上の事業年度については、非課税売上に対応する課税仕入れも課税売上に対応する課税仕入れも(厳密に言えば、その両方の売上に対応する課税仕入れも)全て売上で受け取った消費税額から控除していいよ、という例外措置となります。非課税売上の割合が5%以下の場合、非課税売上に対応する課税仕入れの消費税額を控除しても、全体における影響が少ないと考えられているためです。

 課税売上割合とは、ざっくり言えば、その事業年度における非課税売上の割合です。次の式により求めます。

 課税売上割合=課税期間中の課税売上高 / 課税期間中の総売上高

 居住用のアパート投資における消費税還付を行う場合、この課税売上割合を物件取得事業年度で95%以上にすることにより、5%以下の非課税売上に対応する課税仕入れである建物にかかった消費税額を売上で受け取った消費税額から全額控除できるようにします。

 非課税売上とは先ほど述べた通り、国の方針により消費税を納税する義務のない売上のことです。課税売上とは消費税が発生する取引のことですが、大抵の取引がこれに該当します。(ぼくが現在記事を作成しているスタバでコーヒーを買うときも、スーパーでの買い物も、全て店側の会計処理は課税売上です。)

繰り返しますが、居住用の賃貸収入は非課税売上です。そのため、何かしらの方法で課税売上を増やす必要があります。50万円の賃貸収入がある場合、950万円の課税売上がなければ全額控除をとることができません。短期間で課税売上を得るためのメジャーな方法は金の売買となっています。宝石の玉屋、ゴールドトレーディングが有名なところでしょうか。この際注意しなければならないのが、金を売却した際の受取金額が課税売上高となるわけではなく、その税抜き金額が課税売上高となるところです。また、基本的に金は短期売買することになるため、そこで生じる損失は必要経費として割り切った方がいいでしょう。

3年間の通算課税売上割合=調整計算

 さて、設立事業年度に課税事業者となり、金の売買により課税売上割合を95%以上とし、全額控除により建物にかかる消費税額の還付を無事受けることができた場合でもまだ注意が必要です。平成28年度改正以前でしたら抜け道もあったのですが、調整計算として3年間の通算課税売上割合の問題がまだあります。

 調整計算とは、還付を受けた後3年以内で課税仕入れとなった建物等の用途変更等により課税売上割合が大きく変動してしまった場合、そのまま全額還付したままでは課税の不公平となってしまうため一部返還してもらおう、という考え方です。

 細かい規定があるのですが、アパート投資で消費税還付を行う場合には、還付初年度から3年間の通算課税売上割合が50%以上となっていれば、調整計算による還付金の没収は免れることができます。ただ、3年間の通算課税売上割合が50%以上は中々大変な内容で、年間家賃収入が1500万円のアパートの場合、ざっくり計算で税抜き1500万円×3年間=4500万円の課税売上を達成する必要があります。これを金の売買で実行する場合、1~2%の損失は覚悟する必要があるため、45万円~90万円の必要経費が生じることになります。また、5期目から消費税の免税事業者となるためには2期前の3期目の課税売上割合を1000万円以下とする必要があるため、基本的には1・2期目の間に4500万円の課税売上を達成しておくべきでしょう。

 平成28年度改正以前であれば、届出によりこの調整計算を免れることができたのですが、現行では3年間の課税売上割合を50%以上にするしか方法はありません。

その他

 不動産投資の消費税還付は経験がある税理士にとっては難しい内容ではありません。どのケースでも、コンサルティングする内容は大抵似通っています。

 しかし、今回述べた注意点の他にも、税務署がほぼ必ず提出を求める建物の引渡書・領収書・謄本、課税売上が生じたことが分かる書類、引き渡し時期のずれによる各種届出書など、経験のない税理士又は税務経験のない方にとっては思わぬ落とし穴が数多く潜んでいる案件ではあります。金の売買による損失も含めた収支にメリットを感じ、消費税還付を実行する場合は還付実績があり、なるべく還付報酬やその後の税理士報酬が安いパートナーを見つけられるのがいいと思います。