今回は、これから会社を設立して独立する方、そして個人事業主から法人成りをする方向けに、毎年40件以上の会社設立相談を受けているぼくが、株式会社と合同会社どっちにすればいいのか問題について解説いたします。
株式会社と合同会社のどちらで始めるか、悩んでいませんか?
もしあなたが、ただ設立費用が安いからという理由だけで合同会社を選択してしまうと、来るXデー、合同会社の2大リスクが突然襲い掛かってくるかもしれません。
予めリスクを把握しておけば対策が取れることもありますので、是非この記事を最後までご覧ください。
【会社設立】合同会社と株式会社の違いについて
この章の結論はこちらです。
- 税務・銀行評価関係は基本的に同じ
- 設立費用、ランニングコストは合同会社が有利
- 取引先への信用度は株式会社が有利
→飲食店、不動産賃貸業、BtoB商売なら合同会社でもOK!?
基本的に税務処理や税務手続き・銀行評価は合同会社・株式会社で違いはでません。 税務手続き・申告に違いがないので、税理士報酬も両者で変わりません。
後述しますが、設立費用とランニングコストは合同会社のほうが安くなります。
取引先への信用度は株式会社のほうが有利です。 特に一般消費者だと、株式会社は知っているけど合同会社なんて知らない、という方も多いです。ただ、GoogleやAmazonなど多くの外資系企業が合同会社の日本法人を設立しているので、合同会社の知名度も上がっているのが現状です。
合同会社でも問題ない業種としては、会社名ではなく店名が重要な飲食店、不動産賃貸業、BtoB商売をする方々かと思われます。
合同会社と株式会社の簡単な比較表はこちらです。
まず司法書士に依頼した場合の設立費用の相場は株式会社の場合は約26万円、合同会社の場合は約12万円となります。差額は14万円ほどです。
ちなみに司法書士に依頼せずに自分で申請もできなくはないのですが、おすすめしていません。実際、自分で申請した方の大半が後悔しています。理由を聞くと、書類作成が面倒かつ時間がかかる上に、ネット情報だけだと調べきれない内容もでるので、不安な気持ちを抱えながら申請しなければならないからとのことです。 こんな時間かけるなら営業に時間使えばよかったという感想をよく聞きます。
そして、実は設立費用については、法人登記をする市区町村の特定創業支援等事業の証明書を取得することにより、株式会社なら7.5万円、合同会社なら3万円の登録免許税の減免をうけることができます。
さらに札幌市であれば、そもそも補助金で司法書士に依頼する設立費用を実質0円にすることもできます。詳細は、「【札幌の補助金が熱い】今起業するなら会社設立にしておけ!!」で確認して頂ければと思います。
役員の任期について、株式会社の場合、取締役の任期は最長でも10年となっており、任期満了後は再任の手続き、つまり登記手続きを取る必要があります。
この再任手続き、必要だからといって、親切に通知が来るということはありません。多くの小規模法人の経営者は再任手続きで登記申請が必要なことを知りません。にもかかわらず、任期満了後に再登記しないと、法務局から突然、科料といって罰金の案内が突然来ます。これ、けっこう容赦がなく、10万円以上の罰金を受けたケースも過去に見たことがあります。
これに対し、合同会社であれば役員の任期というものがそもそも存在しませんので、再任の手続きも不要、ランニングコストが発生しません。
社会的信用度、これは主に取引先や知人に対する信用度ですが、株式会社のほうが社会的信用度は高いです。ただ、銀行評価についてはどちらの形態であっても差はありません。
所有と経営について、株式会社の場合は経営者と株主を一致させる必要がありません。これに対し、合同会社の場合は出資者=経営者となります。 また、重要な意思決定をする際の議決権は、株式会社が出資割合、つまりお金を出している人ほど発言権があるのに対し、合同会社では出資割合、つまりお金を出している金額に関係なく、出資者一人一票となります。
ここの内容がよくも悪くも合同会社のリスクとなるのですが、その話は後ほど詳しくいたします。
株式市場への上場について。合同会社の形態ではどんなに大きく成長しても上場することはできません。 合同会社から株式会社へ変更することも可能なのですが、設立と同じくらい費用がかかるので、最初から上場を視野に入れている方は、最初から株式会社を選択しておきましょう。
代表者の肩書について。小さな話でありますが、合同会社の代表の肩書は代表社員となります。 慣れない方だと名刺に「代表社員」と記載があると、?となってしまうかもしれません。 合同会社の場合、社員=取締役という位置づけになるので、一般のイメージとはずれがあるかもしれません。
【会社設立】合同会社の2大リスクについて
ここからは合同会社の2大リスクについてです。 この2つのリスクを知らずに合同会社を設立するのは絶対にやめましょう。
リスク①:一人一票の完全な民主主義
合同会社のリスクの一つ目、一人一票の完全な民主主義について。 先ほどお話しした通り、株式会社ではお金を出した人ほど議決権、つまり発言権があります。 これに対し合同会社では出資割合に関係なく、出資者は皆一人一票の議決権を持ちます。
500万円の出資をしている人でも1万円の出資をしている人でも、議決権は平等ということになります。 これ、配偶者や直系親族と共同出資する場合であれば問題にはなりにくいのですが、友人・知人と共同出資する場合は要注意です。
というのも、その共同経営者と人間関係が良好な時期はいいのですが、ぎくしゃくし出すと、会社として重要な意思決定がなにもできなくなるからです。 仮に出資者2人で合同会社を始めると、どちらかが反対するだけで50%の反対となり、過半数の議決を得ることができません。 つまり、2人とも賛成しないと重要な意思決定、配当や役員報酬額の決定、取締役の選任・解約等が何もできなくなってしまうのです。
また、赤の他人と3人で合同会社を設立してしまうと、事態はもっと深刻かもしれません。 この場合、自分以外の2人が結託することにより代表権を取り上げられてしまうことも考えられるからです。
これが株式会社であれば、議決権は出資割合に応じて決まるので、自分が50%超の株式を所有していれば代表権を取り上げられることはありません。 しかし、合同会社は一人一票の民主主義体制ですのでそうはいきません。 このように合同会社は、共同出資で会社設立する場面ではちょっと不向きなことが多いです。
リスク②:社員(=出資者)が死亡すると(原則)退職扱いとなる(対策方法あり)
合同会社のリスクの2つ目、社員が死亡すると原則退職扱いとなってしまう、です。 合同会社で言う社員とは取締役兼出資者となりますが、その方が死亡すると、その相続人であっても、原則その会社を引き継ぐことができません。 相続人は出資持分に応じた払い戻しを請求するしかできません。
これがもし株式会社であれば、相続人は株式を相続することができ、そのまま取締役につき、事業承継することが可能ですが、合同会社では扱いが異なります。合同会社では社員の地位自体を相続することはできず、出資分のお金をもらうことしかできないのです。
具体的に問題になるケースはこちらの2つです。
- 友人ABの2人会社で友人Aが死亡=友人Bの会社になってしまう
- 一人会社で社員が死亡=会社の解散
友人と2人で合同会社を設立し、友人Aが死亡した場合、友人Aの子供がどんなに会社を引き継ぎたいと思っても、その地位を相続することはできません。 つまり、AB2人で作った会社なのに、Aさんの死亡によりBさん一人の会社になってしまうということです。 勿論、Bさんの許可があれば、Aさんの死亡後にAさんの子供が出資することにより、事業承継することはできますが、現実問題中々難しい気がします。
また、合同会社の場合、一人会社、つまり出資者が一人でその社員が死亡してしまうと、その会社は強制解散となってしまいます。 相続人が事業を引き継ぎたくても無駄です。会社の財産を手にすることはできますが、事業承継はできません。
ただ、この出資者の死亡リスク、けっこう知らない方がいるのですが、実は対策方法があります。 定款に社員が死亡した場合の持ち分承継について記載していれば、相続人が事業承継することが可能です。
具体的には定款にこちらのような文言を入れることになります。
会社設立をきちんとした司法書士に依頼すれば、こちらのような説明を受けることもあると思いますが、自分で設立する場合はよく注意してください。
まとめ
本日は株式会社ではなく合同会社を設立するデメリットについてお話ししました。
注意点はいくつかありますが、こちらの要件に全て合致するのであれば、株式会社ではなく合同会社の設立でも問題ないと思われます。 そして、合同会社の設立であれば、確実にやって頂きたいのが、定款に社員が死亡した場合の持ち分承継の文言を入れることです。 これを入れないと、自分が死んだあとは会社が強制解散となり、相続人が困ったことになるかもしれません。