早期経営改善計画の有効活用について

 キャッシュフローの改善に意欲的な小規模事業者・小規模法人向けの記事となります。早期経営改善計画についてはご存じでしょうか?経営改善への取組を希望する中小企業・中小事業者が、認定支援機関の助言を受けて作成する経営計画のことですが、うまく活用することができれば短期・中期的にキャッシュフローを改善することができるものとなります。今回はそんな早期経営改善計画の有効活用について考えます。

国が後押しする早期経営改善計画の概要と補助金について

概要

中小企業の社長は常に忙しいため、資金繰り、部門(店舗)別の採算管理、事業の発展に向けての課題整理などの基本的な経営管理ができていないケース(=無駄なく最大限の利益を獲得できていない状態)があります。そのような場合に、一度まとまった時間を取り、認定支援機関(主に税理士)と一緒に課題を見つけ出し、短期・中期的な改善計画を検討する取り組みが早期経営改善計画となります。計画は作成するだけでなく、1年後の決算においてモニタリングを行い、進捗結果をその後へ活かすかたちになります。

国の補助について

中小企業の経営改善は国の課題であるため、早期経営改善計画には国の補助金がでます。補助率は2/3、補助額は最大20万円となります。計画作成支援が30万円の場合、20万円が国から補助されるため、実質負担は10万円となります。10万円の負担で専門家に短期・中期的なキャッシュフローの最大化計画について相談できます。うまく活用できれば、将来得られるリターンは莫大です。

早期経営改善計画のメリット

早期経営改善計画業務は顧問税理士に依頼するケースが多いですが、いつもは忙しい経営者と顧問税理士が協力して経営計画を作ることで、お互いの短期・中期的なビジョンを共有することができます。また、対外的にもその会社のビジョンを伝えることができます。それによるメリットについてです。

必要な経営指標が分かる

複数店舗、複数事業があるにもかかわらず部門別管理ができていないケースはありませんか?また、取引ごとの原価率・利益率が把握できずに、原価割れする仕事を引き受けているケースはありませんか?改善計画を考えることで、経営者に必要な情報が何かが分かり、そのデータを把握するための仕組みを作ることができます。一般的に販売管理費は毎月変動が少なく、1か月で稼ぐべき粗利益は大体毎月同じです。小規模法人の経営者は目標とする粗利益とそれを達成するための目標売上高を毎月意識するだけでも大分経営を改善できるケースが多いです。
※まあ、そもそも部門別管理や取引ごとの粗利益の管理は基本中の基本ですが。

顧問税理士から有益な情報を引き出せる

税理士は節税や補助金・助成金、マーケティング情報に対してアンテナをはっています(恐らく多くの税理士は)。さらに、小規模事業者・小規模法人の顧問先からも色々な情報の提供を受けているため、経営者が把握していないキャッシュフロー改善策を持っているものです。本来は面談時に全て伝えることができるのが理想ですが、現実はそうもいきませんので、経営者と税理士が一緒に将来のことを考える中でいいアイデアがでることが多いです。特に補助金や税額控除などの申請は、設備投資前でなければ提出できないものが多いので、手遅れになる前にきちんと計画にいれることができるでしょう。

金融機関からの支援を受けやすくなる

早期経営改善計画はメインバンクの承認を受ける必要があります。そのため、早期経営改善計画で計画した設備投資(経営改善につながることがはっきりしているもの)は、金融機関からの融資を受けやすくなります。

早期経営改善計画が役に立たないケース

早期経営改善計画のメリットを書きましたが、この計画は計画が現実的なもので、かつ計画通りに実施できなければ意味がありません。協力をお願いする税理士事務所の担当者(税理士?税理士事務所の職員?)が頼りになる方(=いつも自主的にいい提案をしてくれる方。資格保有の有無は関係ないと思います。)であれば効果は絶大ですが、あまり信頼できない方である場合は全く意味のない取組になってしまう可能性があります。その場合、中小企業診断士に相談するのも手ですが、顧問契約をしていない方に相談をしてもその会社の実態が分からず、また経過観測もできないため、うまくいかない傾向にあります。
経営改善に意欲的な経営者は、まずその欲求を満たしてくれるパートナー探しから始めたほうがよさそうです。