創業融資NGとなる理由3選(日本政策金融公庫)

今回は、公庫の創業融資に落ちてしまう理由3選をご紹介いたします。

これから起業する方、起業したばかりの方、 創業融資について、真剣に考えていますか?

創業融資を受けられるか受けられないかは、 死活問題となる可能性があります。

ぼくの事務所は起業したてのお客様がほとんどです。 これまでに、起業しようとする方の支援を数多くこなしてきましたが、 創業融資が受けられないというだけで、 せっかく準備してきた起業を延期する方や、諦める方も実際にいるので、 早い段階で今回の内容を把握しておき、 自分は創業融資大丈夫かどうか、 確認することをおすすめいたします。
※創業融資・創業補助金については、「創業融資・補助金・助成金について」で情報がまとまっているので、是非ご参照ください。

創業融資とは

そもそも創業融資とは何かについて、です。

事業ではまとまったお金が必要なタイミングがあります。 例えば、どうしても設備購入が必要になったり、 売掛金の入金までに時間がかかって運転資金が足りなくなったりすることがあります。

もちろん、手元資金ですべてまかなえればいいのですが、 中々そうはいかないのが現実です。

そんなとき、一般的には銀行からお金を借りることになりますが、 これから起業する方や起業したばかりの方に お金を貸してくれる銀行はほとんどありません。

理由は、銀行にとって、実績がなく、貸したお金を返してくれるかわからないからです。 銀行は、営利団体なので、社会的な信用がない会社にはお金を貸してくれません。

この状況、銀行に任せたままだと、起業家が育たず、 国内の経済がいつまでたっても活性化しない、 それだと困るということで、 国や地方公共団体がこれから起業する方でも借りることができる制度を作りました。 それが創業融資です

創業融資は、社会的な信用力が低い、 これから起業しようとする方、起業したての方向けの融資といえます。

創業融資には、日本政策金融公庫の創業融資制度と 都道府県や市区町村による制度融資の2つがあります。 おすすめは今回のテーマになっている日本政策金融公庫の創業融資です。

日本政策金融公庫、公庫と呼ぶことが多いですが、 その公庫、通常の銀行とはちょっと違います。 株主は100%国です。 なので、政策の影響を強く受け、 実績のないこれから起業するという方に対しても、融資することができます。

ただ、これは当然ですが、 起業する人なら誰でも創業融資が受けられるわけではありません。 この人ならお金を貸しても大丈夫そうだな、と、 審査担当者に判断してもらう必要があります。

そして、コロナ以降の最近の創業融資事情ですが、 コロナ以前と比較して、ちょっと審査が厳しくなっています。 経済の先行きが読みにくいので、起業家支援に慎重になっているのかもしれません。

創業融資は、一度審査に落ちると銀行側に履歴が残ってしまい、 最低でも半年間、期間を置く必要があります。 なので、創業融資の申請の際には、これからご紹介する、 審査のNGとなる理由に該当していないどうか、 こちらは、よく確認して、 場合によっては、起業するタイミングをちょっとズラして対策を取るなどして頂ければなと思います。

創業融資NGとなる理由第3位:業界での経験がない

創業融資NGとなる理由第3位、業界での経験がない、です。

これは誰でも想像がつ

くと思います。 創業融資にかかわらず、 起業しようとする分野での経験はめちゃくちゃ重要です。

ぼくも色々な起業家から相談を受けてきましたが、 業界内での十分な実績があるだけで、 その人の語る事業計画が、とても素晴らしいものに聞こえてきます。 売上や利益の予測表も、 あ、この人は現実的な数字をイメージできているんだな、と感じられます。

反対に、その業界での経験がない人については、 残念ながら、事業計画も売上予測表も、 まず、全て疑いの目が向けられます。

仮に全く同じ事業計画内容であっても、 経験豊富な方と未経験者では、評価のされ方がまるで異なります。 もうこれは、単なるバイアス、偏見なんですけど、 実際に公庫の担当者もそういう目で見ますし、 ぼくもそういう目で見てしまいます。

ただ、そうはいっても、ないものはないは仕方ありません。 できる対策を取っていけばいいと思います。 対策としては次のものがあります。

  1. その業界に精通している社員を雇う
  2. パート・アルバイトでもいいのでその業界で働く

起業家・経営者が業界の未経験者であっても、 その業界に精通している社員がいて、 その方が実務を取り仕切ることになっていれば、 融資でマイナスになりません。

第三者が事業計画を聞いたときの反応もまるで違います。 経験者がいることをアピールしておきましょう。

起業家自身が、パート・アルバイトでもいいので 事前にその業界で働いてみるのも有効です。 期間は1年程度でも構いません。 この業界内で起業するんだ、そういう心構えで働くと、 吸収できるものも違ってきます。 そういうところは公庫の審査担当者もわかりますし、 何より、創業に対する真剣度を理解してくれます。 全くの未経験者の場合、おすすめです。

もし起業しようとする分野の経験がない場合には、どちらかの対策を検討して頂ければなと思います。

創業融資NGとなる理由第2位:信用棄損がある

創業融資NGとなる理由第2位、信用棄損がある、です。

これは、一度やってしまったらなかなか挽回できない内容となります。 ここでいう信用棄損とは、滞納等の履歴のことで、 過去に何らかの支払いに遅れている、もしくは現時点でも支払っていないことを言います。

銀行は、一度滞納した人は、また滞納する、信用できない人だと考えます。 これは銀行に限ったことではないんじゃないでしょうか。

友達でも同僚でも、一度遅刻する人は、何度も遅刻しますし、 遅刻しない人は、常に遅刻しません。 請求書の支払いも、期限を守る会社は必ず守りますし、 守らない会社は繰り返し守りません。 なので、お金を貸す銀行が滞納履歴を重視するのは当然といえば当然です。

その上で、言ってしまえば、 公庫が把握できないような支払い遅延であれば問題はないのですが、 やはり金融機関の情報収集力はすごいです。

え、こんな支払いも把握できるの、というくらいよく見てきます。 問題になりやすい履歴には次のものがあります。

  1. ローンやクレジットカード、リボ払いの支払い遅延
  2. 消費者金融からの借入履歴
  3. 公共料金や携帯電話の支払い遅延
  4. 家賃の支払い遅延
  5. 税金の支払い遅延

これらの中で、もし現時点で滞納しているものがあれば、 そもそも今申請しても、創業融資が通ることはありません。 すぐに支払いをしましょう。

ただ、過去の滞納履歴がやっかいで、 これらの履歴は5年から10年間、信用情報機関で保存されます。 公庫の融資担当者は、過去5年から10年の滞納履歴をチェックします。

もちろん、滞納履歴があると創業融資に必ず落ちるというわけではありません。 ぼくが支援した方の中にも、過去にキャッシングの滞納履歴がある方がいましたが、 こちらから融資担当者に 過去の滞納履歴とその経緯を説明することにより 審査が通ったケースもあります。

ただ、やはり滞納履歴は間違いなく、創業融資の審査にはマイナスです。 普段から支払いはきちんとしておき、 もし滞納履歴がある状態で創業融資を受ける場合は、しっかりと対策を取りましょう。

創業融資NGとなる理由第1位:コツコツ貯めてきた自己資金がない

創業融資NGとなる理由第1位、コツコツ貯めてきた自己資金がない、です。

創業融資において、現預金に勝る信用力はありません。 その他が同じ条件でいま100万円を持っている人と1000万円を持っている人、 どちらに500万円を貸す、となったら、 間違いなく後者を選びます。

公庫ホームページ」を見ると、 創業融資の自己資金要件は、10分の一、 つまり、1000万円の開業資金が必要な場合、その10分の1の100万円は自分で用意してね、 残りの900万円は融資を考えてあげるよ、となっています。 ただ、これを鵜呑みしないでください。

その他の条件でよほど評価されない限り、自己資金10分の1では審査に通りません。 特にコロナ以降、創業融資において 自己資金はとても重視されており、 3割程度の自己資金は用意したほうがいいというのが、ぼくの考えです。 なので、1000万円の開業資金が必要な場合、その10分の3の300万円は自己資金を用意し、 700万円の創業融資を申請するのが無難です。

そして、創業融資においては、 自己資金の貯め方が重要となります。 創業融資申請直前に、親族や知人から借りた、 いわゆる「見せ金」と判断されるような資金は自己資金として評価されません。 融資担当者は、通帳の入出金履歴を必ず確認するので、 通帳残高が融資申請直前で急に増加している場合、その理由を聞かれます。 「みせ金」は創業融資では通用しないと考えておいたほうがいいです。

それでは、どのようなお金が自己資金として評価されるかですが、 事業主自身が、一定期の期間をかけてコツコツと貯めてきたことが、 通帳履歴から判断できるような資金が評価されます。 通帳履歴から判断できるというのが重要です。

もし、コツコツ貯めたものであっても、 タンス預金ではその努力を融資担当者が通帳から確認できず、 評価されない可能性が高いです。

ですので、毎月毎月、給与の振込額から様々な支払いをしたあとの残高、 そちらが堅実に右肩上がりで増えているような通帳がベストです。

本日のまとめ

本日のまとめです。

まず、創業融資の概要についてお話ししました。 創業融資には公庫による創業融資と、都道府県や市区町村による制度融資の2つがありました。 おすすめは公庫の創業融資でした。

創業融資がNGとなる理由第3位は、 起業しようとしている業界での経験がない、です。 その場合、経験者を雇うか、1年程度その業界でパート又はアルバイト経験を積むことをおすすめしました。

創業融資がNGとなる理由第2位は信用棄損、です。 過去の滞納履歴等は5年から10年間残ってしまうので、要注意です。

創業融資がNGとなる理由第1位は、コツコツ貯めた自己資金がない、です。 自己資金は3割は欲しいところです。 また、融資担当者は通帳履歴の確認をするため、いわゆる見せ金を通用しないということをお話ししました。

創業融資は、その人の人生を左右しかねない、大事なファーストステップです。 もし不安な点があれば、私の事務所宛てでもいいので、是非お問い合わせください。

今後も税務調査や節税、効率化・補助金活用など、ビジネスに役立つ情報を発信していきます。 それではまたお会いしましょう。