札幌で起業・開業をされる方の支援に力を入れている税理士・関口です。 起業される際に会社設立をするか、個人事業主でいくか、誰しもが悩む内容です。 どちらもメリット・デメリットがあり、最終的には起業家の考え方次第にはなってしまうのですが、 比較検討する際のポイントやメリット・デメリットを紹介しますので、参考にしてみてください。 特に2023年10月から施行されるインボイス制度の影響はきちんと理解しておくことをお勧めいたします。
2021年9月以前は会社設立よりも個人事業主を推奨することが多かった
個人事業主であっても法人であっても、開業後最長2年間は消費税の免税事業者でいることができます。 そのため、個人事業主でスタートし2事業年度終了後に法人成りをすることにより、個人事業主で2年間・法人で2年間の合計4年間(最長)の免税期間を作ることができます。
上記の理由により、従来であれば個人事業主でスタートすることをお勧めすることが多かったのですが、
2023年10月から施行されるインボイス制度の影響により、最長4年間の免税期間を受けることが難しくなりました。
その影響で、最近では起業直後から個人事業主よりも会社設立を推奨するケースが増えてきました。
(2021年10月以降の弊事務所でのご相談では、当初から個人事業主よりも会社設立を推奨するケースの方が多かったです。)
インボイス制度とは
2023年10月1日から「適格請求書発行事業者」が発行する所定の要件を満たした請求書(=インボイス)の交付を受けなければ、消費税の仕入税額控除を受けることができなくなります(経過措置あり)。 これをインボイス制度と言います。
上記を見ても「だから何?何を言っているの?」という方が多いと思いますが、重要なポイントは消費税の免税事業者が「適格請求書発行事業者」になることができないということです。
そして、「適格請求書発行事業者」になれなければ、取引先(消費税の本則課税事業者に限る)の消費税の納税額が増えてしまうことになります。
※インボイス制度についての詳細は「税理士視点からのインボイス制度について」をご参照ください。
インボイス制度の影響により消費税免税期間が取れなくなる理由
2023年10月以降、消費税の免税事業者には下記のリスクがあります。
- 値引き交渉を受けるリスク(取引先の消費税の損失補填)
- 取引停止リスク
実際、「適格請求書発行事業者」以外の事業者との取引を打ち切る動きも既にみられています。 表立って消費税を理由に取引打ち切りをするわけではないと思われますが、いずれにせよ売上減少につながるため死活問題となります。 その結果として、売上先が消費税の本則課税である場合、事実上2023年10月以降消費税の課税事業者にならざるを得ないと考えられています。
2021年10月以降は個人事業主よりも会社設立を推奨するケースが多くなった
2023年10月以降は消費税の免税事業者期間を取ることが事実上難しくなりました。 そのため、2021年10月以降の会社設立であれば2023年10月までにMAX2年間の消費税免税期間を享受することができ、最初から個人事業主よりも会社設立を推奨するケースの方が多くなってきました。個人事業主から法人成りする際には金融機関手続きのみではなく、取引先に対する周知等の工数も発生するため、消費税免税期間に関係ないのであれば最初から法人でやりたいという方も多いです。
ただ、そうは言ってもそもそも利益がほとんどでない場合には個人事業主でスタートしたほうがいいケースもありますし、会社設立のメリット・デメリットもありますので、以下の内容もチェックお願いします。
会社設立のメリット
メリット① 対外的な信用が得られる
会社設立は時間・費用ともにそこまでかけずにできますが、それでも一般的に個人事業主よりも法人の方が対外的な信用力は大きいです。 特に大企業との取引を想定している場合、大企業では個人事業主に直接仕事を発注しないケースも多いため注意が必要です。
十分な実績を取引先に認識してもらえれば個人・法人による信用力は問題になりにくいですが、初取引の場合にはやはり法人の方が受注可能性が上がると思われます。
メリット② 節税等の幅が広くキャッシュフローを最大化しやすい
個人事業主にかかる所得税が累進課税(所得が上がるほど税率が上がり、最大45%+住民税10%)であるのに対し、法人の所得にかかる法人税等は所得800万円以下であれば約23.4%(800万円超に対しては約33%)と税率が大きく異なります。 その他にも法人であれば「社宅制度の活用」・「旅費規程の活用」など有効な節税手段が多くあります。 詳細は「節税等によるCFの最大化」をご参照頂ければと思います。
メリット③ 優秀な人材を集めやすい
法人であれば従業員の社会保険の加入は必須となりますが、個人事業主の場合は業種・規模により任意となります。 また、正社員として応募する人材は個人事業主よりも法人の下で雇用されることを望む傾向にあります。 そのため、法人のほうが大企業で働いていたような優秀な人材を獲得しやすいと言えます。
会社設立のデメリット
会社設立に手間とコストかかる
会社設立にはコストがかかり、ご自身で設立登記をする場合は手間もかかります。
株式会社をご自身で設立する場合約242,000円かかり、司法書士に依頼すると一般的に271,000円かかります。
※関口達也税理士事務所では要件に該当する方向けに設立手数料を無料で会社設立しています。ご興味がある方は「札幌の会社設立料金」をご参照ください。
赤字でも均等割額が発生する
個人事業主の場合、年間の業績が赤字であれば所得税・住民税は発生しません。それに対し法人の場合、年間の業績が例え赤字であっても均等割額(例.札幌の資本金1000万円以下の法人であれば年間70,000円)が発生します。
社会保険料の負担が発生する
法人は社会保険へ加入しなければなりません。将来受け取ることができる厚生年金が増えるため、メリット・デメリット両方ありますが、やはり負担額は大きくなります。 社会保険料の負担額を少なくしたい場合は役員賞与をうまく活用する等の方法もあるため、事前に個人事業主・法人の両方のシミュレーションをしてみるのが一番いいかと思います。
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関口達也税理士事務所ではこれから起業する方向けに、会社設立の有利・不利判定のご相談を無料で承っています。 新型コロナウイルス感染症の影響もあるため、原則zoom面談となります。ご興味ある方は「お問合せフォーム」よりご連絡下さい。