これから開業する、又は開業したばかりの個人事業主向けの記事となります。開業した後は忘れないうちにすみやかに必要書類を提出しましょう。
個人事業主が開業時に提出する書類
法人ではなく、個人事業主として開業する際は下記の書類を提出することになります。
- 重要:開業届出書
- 重要:青色申告承認申請書 (提出期限:基本的に開業して2か月以内)
- 任意:源泉所得税納期の特例の承認に関する申請書
- 任意:青色事業専従者給与に関する届出書
- 従業員いる場合は必要:給与支払事務所等の開設届出書
- 任意所得税の減価償却資産の償却方法の届出書
特に青色申告承認申請書は青色申告特別控除や事業年度の欠損金の繰越控除等の優遇措置を受けるために不可欠、かつ提出期限が決まっているため開業した際は漏れなく提出する必要があります。また、提出する際は後々提出したことが証明できるように控に収受印を押して返却してもらうようにしましょう。提出はe-taxでも可能なものがありますが、現状カードリーダライタ等を入手する必要があるなどハードルがあるため、個人では開始届関連は紙提出がメジャーです。電子申告は確定申告期限までにできるようにしておきましょう。
それでは、重要なものを見ていきましょう。
開業届出書(個人事業の開業・廃業等届出書
新たに事業を開始するとき、個人事業主は開業届出書を提出する必要があります。提出期限は事業開始の日から1月以内とされていますが、期限を過ぎたからといって罰則はありません。この届出書単独でいえば、出しても出さなくてもあまり影響はないように感じられますが、「青色申告承認申請書」と一緒に提出するのが一般的です。
下記国税庁URLでPDFに直接入力・印刷することができます。
<書式>
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/pdf/h28/05.pdf
<書き方>
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/pdf/h29/01_kakikata.pdf
個人事業主は原則居住地が納税地となりますが、事務所を納税地にすることもできます。その際は「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」を一緒に提出することになります。基本的に税務署から送られてくる書類の送付先が変わるだけですが、居住地と事務所が異なる市区町村にある場合で事務所地を納税地とすると、住民税が年間5.6千円余分にかかるデメリットはあります。
<書式>
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/05.htm
青色申告承認申請書
各種税制上の優遇措置が受けられるため、提出期限までに必ず提出しましょう。提出期限をすぎてしまった場合、青色申告ができるのは翌事業年度分の申告からとなってしまいます。提出期限は原則事業開始の日から2か月以内です。1月1日から15日までの間に開業した場合は多少期限が異なりますが、開業日から2月以内に提出すれば問題ありません。青色申告の主なメリットは下記となります。
・青色申告特別控除(10万円or65万円)
※令和2年分の申告から電子申告等の要件を満たした場合は65万円、満たさない場合は55万円の控除となります。
- 欠損金(赤字)を3年間繰り越せる
- 専従者給与(親族へ給与を支給できる)
- 少額減価償却資産の特例(30万円未満の資産を合計300万円までその事業年度に一括経費できる)
源泉所得税納期の特例の承認に関する申請書
従業員がいない場合は関係ありません。従業員が10人未満の場合は提出しましょう。
給与支給者は従業員の給与から源泉徴収した所得税を支給月の翌月10日までに国に納付する必要があります。納期の特例を受ければ年2回の納税とすることができます。毎月の納税は煩雑なため、従業員が10人未満の場合には適用を受けたほうがいいです。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_14.htm
青色事業専従者給与に関する届出書
専従者給与は個人事業主ができる数少ない節税(所得分散)の一つです。要件を満たす場合は適用をうけるべきですが、給与額は社会通念上妥当とされる金額とする必要があります。他人を雇った場合にいくら払う価値があるか考えるといいと思います。
下記青色専従者の適用要件です。
- 青色申告者と同一生計である
- その年の12月31日時点で15歳以上の親族である
- 青色申告者の事業に6か月超従事している
※6か月超従事については判断基準がやや曖昧な部分です。税理士によっても多少判断が異なります。事業に従事できる期間の2分の1を超える期間でもよいため、判断に迷う場合はきちんと基準を明確にしとくべきでしょう。
提出期限は開業時には開業日から2月以内、途中から専従者となった時はその時から2月以内となります。この届出書は翌年以後は毎年3月15日までに提出することになります。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/12.htm
その他
個人事業主の場合、減価償却資産の償却方法は定額法が原則となります。しかし届け出をすることにより一定の資産について定率法を選択することができます。定率法のほうが償却期間の初期に多額の減価償却費を計上することができるため、開業したての時期に収める税金を少なくすることができますが、償却期間全体で考えれば経費化できる金額に差異はありません。わざわざ提出している個人事業主は少ないイメージがあります。
給与支払事務所等の開設届出書については、従業員を雇っている場合は提出義務があるため提出しましょう。
まとめ
開業時は開業準備・営業活動・創業融資申請などやることが多いですが、節税策の多くは開業当時から計画する必要があります。もし手続き関係や節税策に不安がある場合はお気軽にご相談ください。2020年からは顧問契約以外に単発のコンサルタント業務もお受けする予定です。