小規模企業共済について~税理士@札幌の節税術~

 前回ご紹介した中小企業倒産防止共済とともに中小企業経営者に人気の小規模企業共済について、概要と特徴をご紹介します。純粋な節税策をお探しの方は是非お読みください。

制度概要

 小規模企業共済は個人事業主や会社の役員が退職や廃業した時に老後の生活資金をあらかじめ準備しておくための制度で、これも中小機構が提供するものです。退職した時などに積み立ててきた掛金に応じた共済金を受け取るもので、自社で退職金制度を整備することができない法人で退職金制度として利用されることが多いです。中小企業倒産防止共済と同様、掛金を自由に設定することが可能で、月千円から7万円となります。最近話題のイデコ(個人型確定拠出年金)と趣旨が似ていますが、小規模企業共済ではサラリーマン投資家が加入できません。あくまでも個人事業主か小規模な法人の役員に限られます。

メリット

 税制上では、2つメリットがあります。まず、払い込み時ですが、払い込んだ掛金の全額が個人の所得税と住民税の所得控除の対象となります。掛金の最高額である月額7万円とした場合、年間84万円の所得控除を受けることができます。また、受け取り時も一括で受け取れば退職所得と同じ扱いとなり(退職所得は税制上かなり優遇されています。別記事で詳細を扱おうと思います)、分割で受け取る場合も公的年金と同様で雑所得扱いになるため節税効果があります。

 さらに中小企業倒産防止共済と同様、掛金の範囲内で無担保・無保証人で事業資金を貸し付ける契約者貸付制度があります。利率は年1.5%となり、借入期間は借入金額に応じて異なりますが最長で5年間となります。

 また、中小企業倒産防止共済では掛金が戻ってくるだけであるのに対し、小規模企業共済では将来共済金が戻ってくるときは、掛金納付期間に応じ最大120%相当額がもどってきます。ただし、小規模企業共済の最大のデメリットは資金の引出時にあり、掛金納付月数が1年未満の場合に解約手当金は1円も戻ってこず、元本の全額を回収するためには最低でも240か月が必要となります。退職金制度としての意味合いが強いため、個人事業の廃業、法人の解散、65歳に達したなどの解約自由でないと解約は損となる場合が多くなっています。ですので、急に資金が必要となった場合の事業資金としては考えることができません。

 中小企業倒産防止共済と混合されることが多い小規模企業共済は両制度ですが、課税の繰延である中小企業倒産防止共済に対し、小規模企業共済はiDeCoとともに節税策として有効です。まだ加入されていない方は一度検討されることをおすすめ致します。

おまけ

 今日は相続税申告の打ち合わせに行ってきました。相続税財産である土地を売却して相続人が売却代金を等分で受け取りたいとのことでした。共有持ち分として遺産分割協議書を作成してしまうと、相続人全員が売買手続きが必要となり得遠方の場合には大変です。こんな時は換価分割による遺産分割協議書が有効です。該当する場合は是非お調べください。