令和3年度補正予算案を税理士が解説・コメント

令和3年度補正予算案について中小企業庁が情報(「令和3年度補正予算案」)を開示しましたので、税理士としての視点から中小企業の経営者向けに解説・コメントいたします。 中小企業の経営者が一番気になるのは事業復活支援金(持続化給付金の後継で最大250万円の支援金)だと思われますが、金融機関の実質無利子や資本性劣後ローンについても重要なので記載します。
※令和4年度も持続化補助金・IT導入補助金・モノづくり補助金・事業再構築補助金はあるようですが、まだ令和3年度との差異をコメントできるほど情報がないので今回は割愛します。

事業復活支援金

持続化給付金の後継、法人は上限250万円の給付を受けられるという岸田総理の自信満々の支援金です。要件を今のうちに熟読し、もらえるものはもらいましょう。
※持続化給付金・月次支援金同様、利益の出ている会社であれば、雑収入として課税の対象になります。

対象者

新型コロナの影響で2021年11月から2022年3月のいずれかの月の売上高が50%以上又は30%~50%減少した事業者
(中堅・中小・小規模事業者、フリーランスを含む個人事業主)

持続化給付金とは異なり、売上高が50%以上減少していることが絶対条件ではなく、売上高30%から50%の減少であっても支給額は低くなりますが要件は満たすようです。 また固定費負担支援を目的としているため、月次支援金とは異なり、コロナ過で大きな影響を受けていれば地域・業種は問わないようです。 そのため、月次支援金よりも受給者の数は増えることが予想されます。

給付額

5か月分(11月から3月)の売上高減少額を基準に算定

上記給付額の記載内容の解釈がうまくできませんでした。 2021年12月に補正予算が成立した場合、コロナ禍で苦しんでいる中小企業の資金繰りを助けるために、できるだけ早く支給するのが得策だと思われます。 その場合、「売上高が50%以上(or30~50%)減少している月の減少額の5か月分」を支給額とするのがスマートなやり方であり、恐らくそのような方法が取られるのではないかと予測されます。 しかし、中小企業庁の内容を文面通り受け取ると、「2021年11月から2022年3月までの売上高減少額」が明らかになる2022年4月まで申請ができないことになります。追加の情報開示に期待です。

上限額

個人事業主は売上高に分類はなく、下記のような一律の上限額となります。

個人事業主
売上高50%以上減少 50万円
売上高30%以上50%未満減少 30万円

法人は下記のようになります。

年間売上高1億円以下 年間売上高1億円超5億円以下 年間売上高5億円超
売上高50%以上減少 100万円 150万円 250万円
売上高30%以上50%未満減少 60万円 90万円 150万円

売上高に応じて上限額を3段階に分けているのは、規模の小さい特に家族経営の事業者が働かなくてもコロナ以前より利益がでてしまうような状況にようやく配慮したものと思われます。 売上高減少率が50%に満たない場合でも6割の支援金が支給されるのは嬉しいところです。

開始時期

補正予算成立後、所要の準備を経て申請受付開始予定

申請開始時期はまだ決定していません。補正予算案が12月中旬から下旬に成立すると思われる(自民党幹部が言っているので)ため、申請開始は2022年1月下旬から2月ころからではないかと関口は推測しています。 勿論、「給付額」の文面通りに2022年3月の数字が明確になる4月以降となる可能性もありますが、それではスピード感が、、、、、。

資金繰り支援

実質無利子・無担保融資

2021年12月末までではなく、2022年3月末までに延長されました。 まだ実質無利子融資を受けておらずこれから受けたい方は日本政策金融公庫で受けることをお勧めいたします。理由は、借入が不要になった場合に一括返済をしても手数料がかからないからです。 条件などは下記となります。

対象者 新型コロナの影響で売上が減少した中小企業
(小規模個人▲5%/小規模法人▲15%)
申請時期 年度末まで
無利子上限 (中小)3億円、(国民)6,000万円
無利子期間 当初3年間
貸付期間 運転資金15年以内、設備資金20年以内
据置期間 最大で5年

内容はこれまでのコロナ融資と変わりありません。

公庫による資本性劣後ローン

条件は下記となります。

対象者 新型コロナの影響により、キャッシュフローが不足する企業や一時的に財務状況が悪化したため企業再建等に取り組む企業
開始時期 受付中(来年度も実施)
融資上限 (中小)10億円、(国民)7,200万円
貸付期間 5年1か月、7年、10年、15年、20年
※元本については期限一括償還

こちらの利率は当初3年間は0.5%、4年目以降は最終利益が黒字であれば貸付期間に応じて下記利率に上がる仕組みになります。

5年1か月・7年・10年 15年 20年
2.6% 2.7% 2.95%

上記利率を見ると、「3年間実質無利子のほうがいいじゃないか」と思うかもしれませんが、企業の状況によりどちらの融資がいいかは異なります。 それを理解するために「資本性劣後ローン」について知る必要があります。

資本性劣後ローンとは、法的倒産時に他の負債より返済の順位が後回しになるため、金融機関からは自己資本とみなされるローンです。 業績に一時的な悪化によって失われるおそれのある資本を回復させ、財務を安定に保つことで、取引金融機関からの継続的な融資が可能となります。

つまり、資本性劣後ローンは金融機関などからは借入金ではなく自己資本とみなされ、さらに追加融資が必要になった場合でも受けやすい融資ということが言えます。 さらに、仕入先(特に大手企業)によっては取引企業の財務状況を重視しますが、資本性劣後ローンではそのような場合でも取引が不利になりにくい融資と言えます。 そのため、自社を取り巻く状況によっては3年間の実質無利子の融資よりも、利息を払ってでも資本性劣後ローンにしたほうがいい場合もあります。
※実質無利子ローン①と資本性劣後ローン②を同時に受けることも可能なので、状況により適切に判断しましょう。

資金繰り支援に興味がある方は中小企業庁HP」の「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」のP49付近をご一読お願いします。