児童手当の所得制限を考慮して給与を決める~社長の節税~

お子様がいらっしゃる札幌の小規模事業者・小規模法人向けの記事となります。児童手当は所得制限に引っかかると減額されてしまいます。 育児にはお金がかかる上に所得制限者は高額の税金を支払っており、かつ児童手当も減額されると、減額される金額以上に損をした気分になるのではないでしょうか。 今回は、児童手当を満額受給するための役員報酬額の算定についてまとめたいと思います。

児童手当の概要

中学校修了前の児童を養育している方を対象に手当を支給する制度となります。子育て関連では他に、「高校無償化」に所得制限があるため、それぞれ注意が必要となります。
※「幼児教育・保育の無償化」は住民税の非課税世帯に優遇措置がありますが、基本的には所得に関係なく全世帯に共通の制度となります。

児童手当の対象者

中学校修了前(15歳到達後最初の3月31日まで)の児童を養育している父又は母となります。児童については国内に居住していること(留学は除く)が要件となっています。
ややこしいので、父母指定者や児童福祉施設等は割愛します。

児童手当の金額

区分 所得制限未満の受給者 所得制限以上の受給者
0~3歳未満 月額:15,000円 月額:5,000円
3歳から小学校修了前 月額:10,000円(第3子以降15,000円) 月額:5,000円
中学生 月額:10,000円 月額:5,000円

ちなみに、所得制限以上の受給者に支給される月額5,000円は2022年10月支給分から廃止されることが2021年5月に決定されました。世帯合算額ではなく、所得の高い方で所得制限が判断されるため、特に専業主婦(夫)家庭では影響が大きいと考えられます。

児童手当の所得制限について

所得制限については控除の考え方が所得税法上と異なるため、正確に計算するのが難しいです。基本計算は「前年度の年間所得」から「控除」を差し引いた後、下記所得制限限度額を上回るかで判断します。

所得制限限度額(万円)
扶養親族等の数0人 622
扶養親族等の数1人 660
扶養親族等の数2人 698
扶養親族等の数3人 736

ちなみに所得制限については世帯合算ではなく、所得が多いほうの所得を対象として考えます。また、「扶養親族等の数」は、児童のみではなく配偶者等の扶養親族も含みます。

「前年度の年間所得」とは

「前年度の年間所得」には源泉徴収票における「給与所得控除後の金額」、事業所得、不動産所得、一時所得、雑所得だけでなく、単発で発生する退職所得や短期・長期譲渡所得も合算した金額となります。小規模法人の社長で調整しやすいのは当然、役員報酬額になると思われます。

「控除」とは

「控除」は雑損控除額、医療費控除額、小規模企業共済等掛金控除額、障害者控除(27万円or40万円)、寡婦(夫)控除(27万円or35万円)、勤労学生控除(27万円)、定額控除(社会保険料及び生命保険料として一律8万円)の合計となります。
社会保険料・生命保険料控除が所得税法と異なり一律8万円控除となっているのが特徴です。小規模企業共済等掛金を拠出している事業主であれば、掛け金を調整することにより児童手当の所得制限に引っかからないようにすることも可能です。

児童手当を受給するために

所得制限の考え方を見てわかる通り、児童手当を満額受給するためにできることは、基本的には下記となります。

  1. 役員報酬額の調整
  2. 小規模企業共済掛金の調整
  3. (個人事業主の場合は)法人化による上記調整

具体例

小規模法人の社長で税法上の控除対象配偶者と1歳・2歳のお子様がいるケースで、控除が定額控除のみであったときは次のように年間役員報酬額を決めることになります。

扶養親族等の数が3人なので所得制限限度額736万円
⇒年間役員報酬額をXとすると、「X▲195万円▲8万円=736万円」
※195万円は給与収入850万円超の場合の給与所得控除額です
⇒「X=939万円」となり、年間役員報酬額は939万円未満とする必要があります。

小規模企業共済等掛金を調整できる場合も上記と同様に考えます。ただ、計算して思ったのは、「計算が面倒!!」ということです。小規模法人の社長であれば、顧問税理士に相談するのが一番だと思いました。