【知らないと損】インボイス2年縛りの恐怖と補助金~起業・開業・会社設立・助成金・札幌の税理士~

起業時に税務署窓口に行ったがために、本来不要であった税金を支払うことになった、そんなケースが発生しています。
自分を守ることができるのは自分だけ、適切な知識の基に行動をしましょう。

本日は起業・開業する方向けの記事です。
本日の動画をご視聴頂ければ、こちらの内容を理解することができるようになります。

  • インボイス登録の失敗例
  • インボイス制度と2年縛り
  • 開業前に取得したい証明書

起業・開業・会社設立後のインボイス登録の失敗例

まずは開業したての方のインボイス登録の失敗例をご紹介いたします。

  • 美容師が個人事業主として開業
  • 各種届出書を提出しに税務署の窓口へ行った
  • 窓口でもらった用紙に記入をし、税務署へ提出
  • インボイス登録申請書も渡されたので記入して提出
    ⇒1年目から消費税の課税事業者へ
    ⇒2年間取消できない

美容師の方が個人事業主として独立・開業しました。
開業届や青色申告承認申請書などを税務署に提出する必要があるとネットで見たので、まずは税務署の窓口に直接行ったそうです。

で、窓口で開業したので必要書類を提出したい旨を伝えて所、開業届等が束になった用紙をもらい、そこに記入をしてそのまま提出しました。 ここまでは開業者の一般的な流れで、なにも問題ありません。

もちろん、開業届等はネットでダウンロードできます。 ネット取得したものに必要事項を記入し、税務署へ郵送してもOKです。 ただ、不備等気になり、税務署窓口へ直接行く方が多いです。 なので、税務署窓口で開業届等を提出するのは一般的です。

問題は、次で、税務署窓口でインボイス登録申請書も渡され、記入して提出してくださいと窓口担当者に言われたようです。 この方はインボイス制度のことをよく知らなかったようで、指示された通りそのまま記入し、窓口に提出してしまいました。

BtoBビジネスなら、インボイス登録申請書を提出しても特にダメージはないことが多いです。 登録しないと、新規顧客開拓が難しかったりするからです。

ただ、この方は美容室業。顧客は一般消費者です。インボイス登録する必要など全くありません。 にも関わらず、税務署窓口が指示した通り申請書を提出したがために、初年度からインボイス登録、つまり初年度から消費税の課税事業者となってしまいました。

これにより、例えば1・2年目の課税売上が2200万円だった場合、本来であれば消費税の納税は不要でした。 それがインボイス登録のせいで、消費税200万円の2割の40万円を納付する必要がでてしまったというわけです。

当然この方は、この事実を知った後に、税務署窓口に行って、登録の取り消しを求めました。 しかし、取消ができませんでした。 窓口の方は、インボイス登録は2年間取消ができない、再来年までは消費税の課税事業者が必須という内容の一点張りだったとのことです。

法律上の話で言えば、窓口担当者のいう内容に問題はありません。 ただ、道徳的な話で言えば大問題です。

この美容師の方はインボイスの知識がなく、窓口担当者に登録申請書を提出するように言われたから提出しただけです。 インボイス登録のメリット・デメリットの説明は受けなかったとのことです。 にも関わらず、一度提出したら登録の取り消しができない。

この税務署の対応、どうなんでしょうね。 こんなやり取りが、全国で少なからず起きているので、これから起業・開業しようとしている方は十分ご注意下さい。

起業・開業・会社設立時のインボイス制度と2年縛り

インボイス制度

そもそものインボイス制度とインボイスの2年縛りについて。

  • インボイス登録は必須ではない
     インボイス登録=消費税の課税事業者
  • 一般消費者がメインの事業であれば登録しない方が得
     ※美容室・飲食店・居住用賃貸仲介不動産業者・不動産オーナーなど
     1・2期目は本来インボイス登録しなければ消費税免税
  • 但し、開業時からインボイス登録した方がいい場合もある
    ⇒BtoB商売の場合、取引先からの登録圧力が強くなる傾向有
    ⇒インボイス登録しろ、値引しろ、取引打切り、新規取引禁止
    ⇒登録すると消費税の申告・納税が必要になる

インボイス登録するかしないかは、その事業主の考え方次第です。
インボイス登録が必須という訳ではありません。

また、インボイス登録をするということは消費税の課税事業者になるということです。 消費税の納税義務が発生してしまいます。

そのため、インボイス登録の必要性が薄い、一般消費者をメインの顧客とする事業であれば、インボイス登録しない方が納税面で有利です。 一般消費者をメイン顧客とする事業とは、例えば美容室や飲食店、居住用賃貸仲介の不動産業者、不動産保有オーナーなとです。

消費税は2期前の課税売上が1000万円以上でなければ、本来納税義務がありません。 そもそも2期前が存在しない1期目・2期目は本来消費税の免税事業者でいられるのです。

なので、該当の事業者であれば、開業時にインボイス登録申請書は提出しないほうがいいのです。 税務署窓口担当者に勧められるがままに申請書を提出してはいけません。

ただ、そうは言っても、開業時からインボイス登録をしたほうがいい場合もあります。 BtoB商売の場合、取引先からインボイスの登録圧力が強くなる傾向があるからです。

登録圧力とは、インボイス登録しろという直接的なものもあれば、登録しないなら消費税分値引きをしろ、取引打切りや新規取引禁止などです。 開業時に一番大変なのは、顧客開拓なので、BtoB商売の場合、インボイスがネックで新規開拓できないのは非常につらいです。

なので、BtoB商売であれば、登録した方がいいケースがほとんどだと思われます。 そして、インボイス登録すると、消費税の申告と納税が必要になる、という流れです。

インボイスの2年縛り

  • 登録日から2年を経過する日の属する課税期間の末日まで納税義務あり
  • 例)2024年9月登録
     ⇒2026年12月末まで消費税課税事業者
  • 登録申請書の誤提出でも取消が認められないケースが発生

税務署窓口で登録申請書を提出してしまった美容師は2年間インボイスの取り消しができないと言われてしまいました。
これはインボイスの2年縛りと呼ばれている内容です。

こちらに記載されているように、インボイス登録してしまうと、登録日から2年を経過する日の属する課税期間の末日まで納税義務が免除されません。

例えば美容室を開業した個人事業主が2024年9月に登録をしてしまうと、2年経過する日の課税期間の末日というのは2026年12月末のことで、 なんと2年4か月もの間、消費税の課税事業者が強制適用となるということです。

窓口担当者の言われるがままに登録申請書を提出しただけ、にも関わらずです。 そして、今回ご紹介している例の通り、登録申請書の誤提出にも関わらず、登録の取り消しが認められないケースが発生しています。 税務署窓口の対応、道徳的にどうかと思いますが、これから起業する方は十分お気をつけください。

起業・開業・会社設立前に取得したい証明書

  • 特定創業支援等事業の証明書
    ⇒市区町村の起業家向け支援
  • メリット
    ①会社設立費用の軽減
     例)株式会社設立の登録免許税が15万円⇒7.5万円
     ※札幌市なら設立費用が実質0円!
    ②創業融資の利率引き下げ
     0.65%軽減
    ③持続化補助金の上限額アップ
     50万円⇒200万円

最後に、インボイスとは全く関係ありませんが、開業前に是非知っておきたい証明書について軽くお話いたします。

特定創業支援等事業の証明書についてです。 特定創業支援等事業とは市区町村が起業家向けに行っている支援です。 例えば札幌市であれば、このような全体像です。

創業の専門家が開業時の相談に乗ってくれるというものです。 で、このサービス内容は正直どうでもいいのですが、こちらで取得できる証明書のメリットが大きいです。 証明書はこちらの要件をクリアすると発行されます。

例えばさっぽろ創業支援プラザであれば、継続的に4回の面談を行うだけです。 で、証明書のメリットですが、まず会社設立費用の軽減効果があります。 株式会社設立の場合、登録免許税だけで15万円かかりますが、それが半額になります。

また、これは札幌市独自の内容ですが、証明書があれば更に創業補助金がもらえます。 それによって、札幌市であれば、会社設立費用が実質0円となります。

また、公庫の創業融資の利率も0.65%下がります。

その上、新規創業者にとって使い勝手のいい持続化補助金の補助上限額も通常の50万円から200万円に引き上げられます。

証明書のメリットはけっこう大きいので、是非皆さん活用してください。 特に一つ目の会社設立費用の軽減については、設立前に証明書を取得していないとそのメリットを受けられません。 事前に適切な情報を入手して、損なく事業をスタートしましょう。