本日は既に100社以上の事業主の方に支持されている本当に意味のある節税とは何かについてお話いたします。事業主の中でも特に税金・資金繰りに悩んだことがある方は必見です。
先日初めてコンサルティングのご相談に来られた社長さんに、資金繰りをよくする方法についてご質問を受けました。簡単なヒアリング後にその会社の問題点は間違った節税策にあることがわかり、ぼくが考えるいい節税と悪い節税についてお話したところ、大変感謝されましたので、今回のテーマを記事にしました。
突然ですが、皆さん、税金、なるべく払いたくありませんよね?税理士であるぼくでさえそうです。先日ぼくが保有している法人の決算申告をしたのですが、決算時に100万円以上の法人税を支払うときと、ちょっと舌打ちしたくなるので、もう無心で申告をし、支払もオンライン上で機械的にやることにしています。そう、みんな税金はなるべくなら払いたくないと思っているのです。
まあただ、困ったことに、納税が嫌だからと、業者にすすめられるがまま、安易に悪い節税策に走ってしまうと、手元資金はすぐ枯渇します。お金はヒト・モノ・カネといった経営資源の一つです。手元資金が不足すれば健全な成長を阻害するだけでなく、経営そのものが危うくなります。
今回は、そんな節税と手元資金のバランスを考えるためのヒントを得ることができる内容となっています。
※今回の記事は個別の節税手法を取り扱う内容ではありません
悪い節税策とはなにか
皆さんが思い浮かべる、悪い節税策とは何でしょうか?
ぼくは「税金を少なくすることをメインの目的とした外部へのお金の流出」が悪い節税策と考えています。要は利益を減らしたいので不必要にお金を誰かに支払うといった行為を悪い節税と言っています。なぜなら、悪い節税策は会社の成長機会を奪い、大部分は会社の資金繰りを悪化させる、得をするのは商品・サービスを販売した業者のみとなるからです。もう一度言います。得をするのは商品・サービスを販売した業者のみです。
悪い節税策の代表例に次のものがあります。
- 決算直前の無駄な設備・サービス購入
- 全損保険の加入・足場リース
- (△)倒産防止共済等
無駄な設備・サービス購入は悪い節税策
当たり前かもしれませんが、無駄な設備・サービス購入はお金の無駄遣いです。納税が嫌だからと、使うか分からない社内サーバーへの投資や新型Macブックの大量購入などはやめましょう。そんなことをするくらいでしたら、税金を支払って手元資金を増やす方が圧倒的に賢明です。
100万円の無駄遣い⇒23万円税金が少なくなるが手元に何も残らない
無駄遣いしない⇒23万円の税金を支払って手元に77万円残る
法人の場合、800万円以下の課税所得に対して約23%、800万円超の課税所得に対して約34%の実効税率となっています。100万円の無駄遣いをして23万円の税金を少なくする、結果として手元に何も残らないよりも、23万円の税金を払って77万円の手元資金を確保しましょう。
全損保険・足場リースも悪い節税策
また、すでに新規契約がなくなった全損保険も、悪い節税策の代表例です。
全損保険とは、掛け金を全額経費処理でき、積み立てた掛金を一定期間後に解約することにより取り戻すことができる商品です。年間の掛金を数百万円に設定でき、その数百万円を経費処理できる手軽な節税策として普及しました。もっと言えば、営業トークに使いやすいので売れました。
ぼくのところにもよく保険代理店の方から営業の電話がきて、いかに優れた節税商品であるかを熱弁されたことがありますが、これも悪い節税に分類されます。全損保険自体は新規取り扱いがもうありませんが、倒産防止共済などにも共通するので理由もお話しします。主に3つの理由があります。
- 解約返礼率が100%を下回る
- 解約時に結局入金額が全額益金となる
- 資金繰りに苦しむ
解約返礼率が100%を下回る
1つ目について、積み立てた掛金は解約時に取り戻すのですが、一番いい時期であっても解約返礼率は100%を下回ることが多いです。つまり、積み立ててきた掛金の元本割れをする仕組みになっています。しかも、そもそも政府はインフレ率を年2%で上昇させることを掲げています。その達成の可否はともかくとして、ぼくも少年時代よく食べていたあの駄菓子=うまい棒ですら、10円から12円への値上がりが決定されました。20%のインフレです。がりがり君もいつの間にか10円値上がりしています。こちらも約20%のインフレです。10年・20年前よりも今の方が物価が上昇していることは間違いありません。そんな中で、10年後の解約時に元本の130%が戻ってくるのでしたらまだ分かりますが、そもそも元本割れする商品を買うのはNGです。
解約時に結局入金額が全額益金となる
全損保険がNGな理由の2つ目について、解約のタイミングで解約返戻金額は全額収益計上する必要があります。図に表すとこのようなイメージになり、事業年度単体ではなく契約から解約のトータル期間で考えれば、節税の効果は全くありません。保険会社の営業トークとして、解約時に解約返戻金と同額以上の退職金を支給する、というのがありますが、うまくいった例はほとんどありません。なぜなら、10年20年後の経営者自らの退職・引継ぎのタイミングを正確に予測することは困難だからです。例えば、新しいビジネスアイデアがでてきて、それが軌道に乗り出したときに引退なんてできますか?ぼくでしたら、面白くなって夢中になります。解約返礼率の高いタイミングは保険契約時に設定しますが、その期間は短いです。遠い将来のピンポイントのタイミングで上手く後継者に引継ぎをして綺麗に引退、そんなことできるのでしょうか。もう一度言いますが、うまくいった例を 見たことがありません。
資金繰りに苦しむ
3つ目について、全損保険は一度契約した場合、業績のいい年も悪い年も、必ず初期に設定した掛金を支払う必要があります。解約しない限り、永遠と年数百万円の支払が続きます。掛金額の変更はできません。多くの事業主は10年以上先に解約返礼率が高いタイミングをもってきますが、そんな長期間業績が本当に安定するのでしょうか?数百万円あれば社内システムを入れ替えて年間100万円のコストカットができたのに、といったことにならないでしょうか?
全損保険は設定した時期以外のタイミングで解約すると、解約返礼率が50%を下回るケースが多くなります。資金繰りに苦しくなり、予期せぬタイミングで解約すると大損です。
税理士として数多くの法人をみてきましたが、全損保険に加入してハッピーな結末を迎えたケースはほとんど見たことがありません。
※ちなみに、倒産防止共済も全損保険と同様の理由により、基本的にはおすすめしていません。しかし、倒産防止共済については実行税率の調整に利用できたり銀行評価を下げない方法もあるので、ケースバイケースで利用しています。詳細は別記事でお話しいたします。
悪い節税内容のおさらい
悪い節税=税金を少なくすることをメインの目的とした外部へのお金の流出
ダメなのは節税をメインの目的とした支払、キャッシュアウトフローです。設備投資など事業の健全な成長のために必要な支出は全く問題ありません。
また、不動産投資のように本業とは無関係であっても、ほぼ確実に投資額を上回るリターンを確保できるプラン・投資案件であれば、それもぼくは否定しません。
あくまでも、その年の税金の支払額を少なくすることをメインの目的にした、いわゆる節税商品の購入はほぼNGだと考えています。
本当に意味のある節税とはなにか
さて、今まで悪い節税策について具体例を交えてお話してきましたが、本当に意味のある節税策は悪い節税策の反対となります。
悪い節税策について理解された方はもう何となくイメージできたのではないかと思います。
そう、「無駄なお金を外部に出さずに税金を少なくする手法」が意味のある節税策となります。
え、そんなことできるの?と思った方、できます。架空経費を計上しろってこと?と思った方、違います。
当然ですが、売上隠しや経費の水増しは絶対にNGです。それは節税ではなく脱税=犯罪になります。そうではなく、支出をしなくても経費にできるものの活用や住居費など事業主の生活に不可欠な支出をできるだけ経費計上にするのが意味のある節税となります。
無駄なお金を外部に出さずに税金を少なくする手法
代表例として次の内容があります。
- 旅費日当の支給)
- 社宅活用
- 役員賞与の活用による社保削減策
- 生活・娯楽に不可欠な支出を経費計上する(グレーゾーン)
- 各種税額控除の活用
※おまけ:iDeCo・小規模企業共済
今回の記事では細かい内容はご紹介しません。
ただ、①から⑤に共通する内容として理解頂きたいのは、どれも税金の支払額を少なくすることを目的として新たに外部へお金を支払うという内容ではない、無駄遣いでもないということです。
例えば事業主が賃貸住宅に住んでいれば、必ず住居費は発生しますよね?何も考えなければその住居費は経費にならず、事業主のポケットマネーから支払うことになります。その支出を合法的に経費計上しようという考えが、まさに意味のある節税です。 現状の経費計上できていない支出内容を利用して、いかに税金を少なくするかを考えた手法であることがポイントです。
本日のまとめ
- 手元資金は大事な経営資源
⇒納めるべき税金は納めて健全な成長のために使う - 悪い節税=税金を少なくすることをメインの目的とした外部へのお金の流出
例)決算直前の無駄遣い、全損保険・足場リース・(△)倒産防止共済 - 意味のある節税=「無駄なお金を外部に出さずに税金を少なくする手法」
例)旅費日当、社宅活用、役員賞与の活用による社保削減策など