税務調査で絶対に譲ってはいけない内容(脱税と申告漏れ、節税の違い)

今回は、税務調査で絶対に譲ってはいけない内容について記事にしました。

コロナ禍ではあっても、調査の問い合わせもちらほらでてきているので、 皆さんも知識として蓄えておいてほしいです。

「節税」とは何か

節税とは、合法的に税金を少なくすることです。 つまり税法の定める範囲内で、納税額を少なくする行為を節税と言います。

効果が大きい節税策の代表例として、次のものがあります。

  • 旅費日当の支給
  • 社宅活用
  • 役員賞与を用いた社保削減策

この3つは、外部へ無駄なお金の支払いをしないでできる節税策で、 会社や個人にお金を残したまま税金だけを少なくすることができる貴重な節税策です。
例えば旅費日当は、国や地方自治体でも実施しているような内容です。 正直、やらない理由が見当たりません。

別記事で詳細をご紹介しているので、是非そちらもご視聴下さい。

それに対し、税金は少なくすることができるけど、手元にお金が残らない、そんな方法として法人保険や倒産防止共済などがあります。
こちら、手元資金が枯渇するので個人的にはおすすめできる方法ではありませんが、手法の定める範囲内での行為なので、もちろん節税に該当します。

節税は、事業主に与えられた権利です。
やりすぎはかえって資金不足を招くのでNGではあるのですが、会社・個人にお金が残るような、適度な節税策はみなさん実施すべきだと思います。

それに対し、これからお話しする申告漏れや脱税は、合法的なものではありません ミスや不正が絡んだ内容となっています

申告漏れと脱税の違いについて

申告漏れと脱税の違いについて、知りましょう。

テレビや新聞でも、時々、有名人の脱税だとか、申告漏れといったニュースがありますよね。 ぼくは、当時人気絶好調だったチュートリアルの徳井さんの件はよく覚えています。 仲の良い女友達が、徳井さんの熱烈なファンで、こんなことを言っていたのが記憶に残っています。
「こんなの芸能人みんなやってるのに、徳井さんだけかわいそう」

芸能人がみんな脱税や申告漏れをしているかは、知りませんが、徳井さんのケースでは1億円以上の所得の申告漏れで、大きなニュースになりましたね。

その際、テレビや新聞では、脱税という言葉ではなく、申告漏れという言葉が使われていました。 脱税と申告漏れでは、国税の対応も罰則もまるで変ってきます。 この両者の違いは、このように考えて頂ければいいと思います。

  • 申告漏れ=単純な計算ミスや経費計上の誤り
    (+税務署側との見解の相違)
  • 脱税=仮装隠蔽行為による所得隠しなど
    ⇒重加算税の対象、悪質な場合は逮捕
         ※数年以内に再び調査が来る

申告漏れは、単純な計算ミスや経費計上の誤り、で悪意のないものです。 例えば、突発で発生した現金売上をうっかり計上し忘れた、などです。 税務署側との見解の相違、も申告漏れに含まれます。

みなさんも、大企業が「国税局と見解の相違があった」と、おなじみのフレーズを口にしているのを聞いたことがあるのではないでしょうか。 けっこう苦しい言い訳のようなイメージをうけますが、脱税していたわけではないんだよとアピールしているのかもしれません。

この単なる申告漏れの場合、大きな罰則はありません。 本来の税金よりも、少し多めに支払うだけです。

これに対し、脱税は、仮装隠蔽行為による所得隠しなど、を言います。 仮装隠蔽行為とは、文字通り、ないものをでっちあげたり、あるものを隠す行為のことです。 具体的には、架空の外注費を計上する行為が仮装ですし、現金売上を故意に計上しない行為が隠蔽、です。

この仮装隠蔽行為が絡んだ所得隠しは、脱税、つまり犯罪になるので、絶対にやめましょう。 道徳的な問題だけでいっているわけではありません。 罰則が大きいからです。

まず、脱税となると重加算税の対象となり、本来の納税額よりも4割程度納税額が多くなります。 無駄に支払う税金が多くなるということですね。

それだけでなく、数年以内に再び税務調査がくることになります。 重加算税が課された会社というのは、しばらく税務署側からマークされるということですね。

そしてさらに、仮装隠蔽行為が悪質だと判断されれば、逮捕される可能性もあります。 悪質の判断は、例えば所得隠しの金額が大きいとか、手口が非常に巧妙だとか、ですね。

再びチューリアルの徳井さんのケースをみてみましょう。 彼のケースでは、主に2点の内容による所得計上漏れ、でした。

  1. 個人的な旅行や洋服代等を会社の経費にしていた
  2. 3年間無申告だった

この2つの内容、私的支出の経費計上や無申告、です。 架空経費の計上や売上除外といった内容ではなく、国税局としても、仮装隠蔽行為を立証するのが難しそうです。 特に、無申告、という内容については、もはや隠す隠さないというよりも、本人が会見で主張したように「非常にルーズだった」という言葉のほうがしっくりきます。

さらに、悪質性を立証するのはもっと困難だったのではないかなと思われます。 これが、例えば地方ロケで、企画会社から振込ではなくあえて現金で報酬を受け取っており、それを徳井さんが売上計上していなかった、などの隠蔽行為があれば話は別です。 入出金の履歴が残らない現金での受け渡しは、脱税行為の基本で、国税局もその企画会社へ反面調査をすることにより、 その隠蔽行為の証拠を徹底的に暴いたはずです。

徳井さんのケースでは金額も世間へのインパクト大きいので、当然反面調査も行われたと思われますが、そういった不正の証拠がでてこなかったのでしょうね。

ちなみに、反面調査とは、本命の調査先の取引先へ、あくまでも本命の調査先の不正の証拠を集めるために行われる調査です。

ぼくも時々、明らかに反面調査だな、と思われる調査に立ち会うことがあります。

税務調査で修正に応じていい内容

税務調査で修正に応じていい内容、についてです。

税務調査で何も指摘を受けないと言うケースはほとんどありません。 これは仕方ありません。 ですが、調査官から指摘されたからと言って、何でもかんでも修正に応じるのは非常に危険です。

なぜなら調査官は追徴課税を取るのが仕事で、中には税法のルールから逸脱した追徴を迫ってくる調査官、自分の手柄しか考えてない方も一定数いるからです。 そのような調査官の指摘に全て応じてしまうと、本来払うべきでない、不要な税金を支払うことになってしまいます。

ですので、ここではまず、素直に修正に応じるべき内容についてお話しいたします。

修正に応じるべき内容は大別すると次の2つです

  1. 期間損益のズレ
  2. 明らかな入力ミス

期間損益のズレ

期間損益のズレとは、前期計上しなければならなかった売上を前期計上せずに今期計上していた、ですとか、前期計上してた外注費が実は今期計上しなければいけなかった内容だった、などのことです。

専門的な言い方をすれば、発生主義ではなく現金主義で計上していた、ということになりますね 。 具体例を挙げれば、商品と請求書の発送は前期にやっていた、けどその売掛金の入金は今期だった、といったケースで起こりやすい内容です。

商品の発送時に売上計上をする、つまり発生主義が税法のルールなので、 計上タイミングを誤っていたとした場合は修正に応じる必要があります。

そして、実はこの修正、事業主にとっては特段不利であったり、 損になる修正内容でもありません。 というのも、売上が今期で計上されようが、前期で計上されようが、前期と今期の2年間トータルで考えれば、売上も利益も変わらず、 それであれば、修正に応じようが応じまいが、2年間トータルでの税金はほとんど変わらないからです。

そして、こういった期間損益のズレによる追徴であっても税務調査官は自分の成果としてきちんと評価されます ある程度の満足感を持って帰ってくれます。

ですので、この期間損益のズレによる修正については、素直に応じてもいいのかなと思います。

明らかな入力ミス

明らかな入力ミスも修正に応じるべき内容となります。 まあ、これは当たり前ですよね。

レシート・領収書の金額の打ち間違いについては、反論の余地がありません。 帳簿の金額と書類上の金額に差異があれば、素直に認めましょう。

10万円以上の商品購入は、一括経費処理ではなく資産計上をして何年間かで減価償却をするのが原則です。 もし知らなかったとしても、見落としていたとしても仕方ありません、素直に認め、修正に応じましょう。

小難しい内容になりますが、事務所を借りる際の礼金も一括経費処理はNGで、繰延資産として何年かで均等償却が原則となります。 こういった小難しい税法のルールは知らなくてもしょうがありませんし、そういった根拠をきちんと教えてもらった部分については修正に応じればいいのかなと思います。

税務調査で死守したい内容)

先程とは逆に、修正に応じるべきではない内容について、です。 先ほどお話しした通り、調査官の中には自分の成績のことばかり考えている方が一定数います。 そんな調査官から自らを守るためにも、次の2点の修正には安易に応じないようにしましょう。 一つ目がグレーゾーン経費で、二つ目が仮装隠蔽がない行為の重加算税、です。

グレーゾーン経費

修正に応じるべきでない内容の一つ目、グレーゾーン経費の損金不算入、についてです。 この話をすると、ブラックな経費、例えば事業に関係のない友達と行ったゴルフ代についても、修正に応じなくていいの?と思われそうで嫌なのですが、そういう意味ではありません。 事業に関係がないことが明らかな、単なる遊びは交際費にはならないので、初めから経費処理すべきではありません。 もし調査で指摘されたのであれば修正する必要があります。

ここで言いたいのは、当時は事業に関係があったんだけど結局売上に結び付かなかった件や関係性は薄いけど事業と紐づいているようなグレーゾーンの経費のことです。

例えば交際費で言えば、得意先の接待だけが経費処理が許されているわけではありません。 得意先ではない方々との、情報収集を目的とした接待も立派な交際費です。 確かに、誰と一緒に行ったかどうかも重要なのですが、接待の目的も同じくらい重要です。 事業との関連付けがきちんと説明できる支出であるかどうかが重要です。

そして、言ってしまえば、このあたりの部分は事実認定の問題です。 税法のルールにより厳密に決まるという部分ではありません。

ですので、もし調査官が事業との関連性がないので修正申告するように求めても、事業との関連性があると考えている根拠を粘り強く伝えることをおすすめいたします。

期間損益のズレによる修正申告だと、2年間のトータルの納税額はかわらないと話しましたが、このグレーゾーン経費の修正申告の場合は違います。 純粋にトータルの納税額が多くなってしまうので、この点も簡単に修正に応じてはいけない理由となっています。

仮装隠蔽がない行為の重加算税

修正に応じるべきでない内容の二つ目、仮装隠蔽がない行為の重加算税、です。 これは修正に応じるというよりは、修正に応じた際に調査官から言われる一言、 「この件は重加算税ということでいいですか?」 というコメントに対する答え方の話です。

重加算税についてはすでにお話いたしました。 「仮装隠蔽行為による所得隠し」で、 もし重加算税となってしまうと数年以内に再び税務調査が来る、という内容でしたね。

調査官はこの重加算税を取りたくて仕方がありません。 通常の追徴課税よりも重加算税の方が評価されるからです。 なので、明らかに仮装も隠蔽も該当しないような修正内容についても、「重加算税でいいですか?」と聞いてくるケースがあります。

この質問に対して、安易にイエスというのは絶対にやめましょう。 不必要な額の税金を支払うだけでなく、また数年で調査が来ることになってしまい、非常に手間暇かかります。

事業主が、仮装隠蔽行為に該当していないなと思うときは、明確にノーと言いましょう。

何が仮装隠蔽行為に該当しているのかと、調査官に逆に質問しましょう。

本日のまとめ

まず節税、申告漏れ、脱税の違いについてお話いたしました。 節税は税法のルールに従った行為で、事業主の権利です。 それに対し、申告漏れは単純なミスなどによる修正、脱税は仮装隠蔽の行為が絡んだ所得隠し、でした。

税務調査で修正に応じていい内容として、一つ目は、期間損益のズレ、二つ目は、明らかな入力ミス、がありました。

調査で譲りたくない内容としては、一つ目にグレーゾーン経費の否認、二つ目に重加算税、のお話をしました。

重加算税になると数年以内に再び税務調査が来ることになるので、こちらは死守したいということでした。