【税務調査官にヒアリング】税務調査に入られやすい人の特徴

最近立て続けに税務署OBの方々と交流する機会がありました。せっかくなので、税務調査についてしつこくヒアリングしてきたので、そのフィードバックです。

そもそも皆さん、税務調査ってどんなイメージを持っていますか?
調査を受けたことがない方にとっては、ひたすら怖いイメージがあるのではないでしょうか。また、調査を受けたことがある方にとっては、貴重な時間が奪われてしんどいと感じるかもしれません。そう、悪いことをしていない人でも、正直、税務調査は受けたくないのです。

今回はそんな税務署に残念ながら入られやすい人の特徴をお話いたします。

調査官の特徴を知ろう

まず、調査官の特徴を知っておくのが大事です。特徴を知ると、調査官がどんな会社に税務調査をしたいかがイメージ湧きます。

調査官は公務員です。ただ、よく言われるのですが、一般企業の営業職に近い立ち位置です。どういうことかと言うと、調査官は税務調査で追徴した税金・重加算税の件数・金額によって評価されます。出世はそれで決まります。成果主義となっています。

ぼくがかつて勤務していたキーエンスという会社も成果主義でした。訪問件数などのノルマもありました。ノルマの穴埋めで売上が見込めない客先へアポ取りをすることもあったのですが、そんな時は上司から叱責されました。「なんでそんな会社に訪問するんだ」とキーエンスお得意のなぜなぜ攻撃が始まりました。外報詰めとも言います。
※キーエンス用語:「外報」・・・訪問日の前日に営業が翌日の訪問先・内容について上司から徹底的に詰められる儀式。なお、訪問後にも同様の儀式が行われる。

税務署内でもキーエンスと同様のことが行われるようです。追徴税・重加算税が取れそうもない会社への調査を上司に相談すると、「なんでそんな会社に行くんだよ」と、外報詰めのようなものが始まるようです。公務員というよりは営業職に近いです。

そのため、調査官は追徴税・重加算税が取れそうな会社へ調査に行きたいです。なぜなら、出世したいからです。上司に怒られたくないからです。
さらに言えば、調査官は調査を効率的に行いたいはずです。もっと言えば、なるべく時間を使わないで追徴課税・重加算税が取りたいのです。ですので、面倒な会社は敬遠する傾向にあります。

調査官の特徴をまとめると、このようになります。

  • 調査官は成果主義で営業職に近い立場
  • 調査官は効率よく追徴課税・重加算税が取りたい

税務調査の対象①:過去3年の数字の変動が大きい

調査官は基本的に過去3期分の申告書の数字を並べて、数字の変動が大きい会社をピックアップするようです。数字というのは売上・仕入・外注費といった科目の数字がメインになります。例えば売上が1年で3倍になり、その次の1年でさらに4倍になっているような成長企業は、売上の変動が大きいとみなされ税務調査が入る可能性が極めて高いということになります。例えば、一発屋と呼ばれるお笑い芸人ですね。彼らには数年後に税務調査が入るケースが多いです。

急成長している会社に税務調査が入りやすいのは当然といえば当然です。ぼくもそうですが、急成長している会社があれば、その理由を知りたいと思うのが普通です。さらに、調査官の立場としては、売上の成長に経理体制が追い付かないで、何かしらミスとかあるんじゃないかなと考えるのが当然かもしれません。

売上の他の数字で原価率もよく見られます。原価率は仕入高を売上高で割り戻した比率のことです。原価率が各事業年度で大きく変動している会社は調査に入られやすいです。というのも、売上が変動したとしても、通常は原価率というのは変動しないからです。例えば、キーエンス、売上が右肩上がり・変動もある程度大きく、色々な商品を扱っています。ただそんなキーエンスでも、原価率は毎年10%台をキープしています。原価率が大きく変動することはありません。

そのため、この原価率が年によって大きく変動している会社については、調査官に疑われます。なにを疑われるかというと、期末の棚卸がおかしいんじゃないかとか、売上隠しがあるのではないかということです。よって、調査に入られる可能性が高くなると思っておいてください。ちなみに、外注費や消耗品費についても、同様のことが言えます。

その対策というわけではないのですが、会計入力をする際に前年比で数字が大きく変動している科目があれば、その科目への割り当てが適正かどうかは確認することをおすすめします。ただの割り振りミスで目立ってしまうのは少しもったいないと思います。

税務調査の対象②:売上が伸びているのに利益が伸びていない

次に売上が伸びているのに利益は毎年同水準になっている会社、こちらも調査対象になりやすいです。なぜなら、一般的に売上が大きくなれば利益も大きくなると考えられるからです。不適切な経費計上があるんじゃないの?と疑問を向けられます。 実際には広告や設備投資をすることにより利益が伸びないケースも多いので、変なことではありません。税務署側の経験則で、売上右肩上がり・利益同水準の会社をターゲットとしているだけなので、もう割り切るしかありません。

税務調査の対象③過去に重加算税が取られている

過去に重加算税が取られている会社も税務調査に入られやすいです。

重加算税というのは、税務調査時に売上隠しや架空経費の計上といった悪質な内容が明らかになると科されるものです。一度そういった悪質な経理処理をする会社というのは、再度やる可能性が高いと税務署は考えています。また、実際同じようなことをやっているケースが多いようです。ですので、重加算税が課された会社は5年以内に高確率で再度調査があると考えておいたほうがいいです。

ちなみに重加算税についてよくある勘違いなのですが、単なる処理漏れやミスは重加算税に本来なりません。重加算税は「隠蔽又は仮装」があった場合に科されるもので、例えば二重帳簿をつけていたり、改ざん等をしていたりしなければ通常は科されません。 ただ、やっかいなのが、調査官によっては、すぐ重加算税を取りたがるところです。

特徴のところでお話ししましたが、調査官は営業と同じです。自分の成果が欲しいです。一番欲しいのは重加算税です。ですので、重加算税の要件を満たしていない、彼らもそれは理解しているはずなのに、重加算税でいいですか?と聞いてくる調査官がいます。立派な調査官も多いのですが、一定数、貪欲すぎる調査官もいます。重加算税でいいはずがありません。経営者の方は十分気を付けてください。

税務調査の対象④:売上が毎年900万円前後で1000万円を超えない会社

売上が毎年毎年1000万円を超えない会社も税務調査で狙われやすいです。 理由としては、売上調整をして消費税の課税を免れているのではないかと疑われやすいからです。消費税についてあえて簡単に言うと、売上が1000万円を超えるとその翌々年に消費税を納税する必要がでてきます。税負担が増えます。なので、その負担を避けるために不適切な売上計上をしているのではないかと税務署側は考えるのです。もし調査で売上の入力漏れが見つかれば、法人税や所得税だけでなく、消費税も新たに徴収できるので、調査官にとってはおいしい会社となるのです。

おまけ:元社員・取引先からのタレコミ情報は貴重

最後に、信ぴょう性が高いタレコミ情報も貴重な情報源とのことです。ぼくも知らなかったのですが、税務署に電話やメールで寄せられる情報があるようで、中には元社員や取引先などかなり内部に近い情報提供者からのリークもあるようです。 経営者の皆さん、人に恨みを持たれないようにしましょう。

本日の結論

税務調査官=ノルマを定められたキーエンス並みの営業職である
      ※徴収税・重加算税をどんどん取りたい
税務調査に入られやすい人

  • 三期分の決算書の対比で数字の変動が大きい会社(売上・原価率など)
  • 売上が伸びているのに利益が伸びていない会社
  • 過去に重加算税が取られている会社
  • 売上が毎年900万円前後で1000万円を超えない会社
  • タレコミ情報がある会社