この記事は、年金に過度な期待をせず、自分の老後や会社の未来は自分で切り開こうとされている小規模企業の社長や、これから札幌で起業・開業・創業をお考えの経営者向けの内容となっています。
所得税は累進課税制度をとっており、所得が上がるにつれて所得税率は最大45%(住民税と合わせると約55%)まで跳ね上がります。年収の半分近くが税金の支払いに消えてしまう日本の税制において、唯一と言っていいほど国から非常に優遇されているのが「退職所得」です。
今回は、そんな退職所得を複数作り出し、適切に受け取ることによる劇的な節税効果と、2026年(令和8年)1月1日以降の退職金受給に適用される「退職所得控除の二重取りを防ぐ重大な税制改正(10年ルールへの延長)」について徹底的に解説します。
やり方次第で実質所得税率が30%以上も変わってくる内容ですが、長期的なプランニングが必須です。特にこれから札幌で起業し、手元キャッシュを最大化したい経営者の方は、早い段階からこの「出口戦略」を検討しておきましょう。
1. そもそも退職所得とは?所得税法上の「3つの強力な優遇措置」
退職所得が通常の給与所得や役員報酬と大きく異なり、手元にお金を残しやすい理由は、所得税法上に設けられた以下の3つの強力な優遇措置があるからです。
① 退職所得控除(非課税枠が非常に大きい)
勤続年数(または掛金拠出期間)に応じて、一定額を所得から無条件で控除できます。この非課税枠内であれば、税金は1円もかかりません。
- 勤続年数20年以下の場合: 40万円 × 勤続年数(最低80万円)
- 勤続年数20年超の場合: 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)
例えば、勤続年数15年の場合は600万円、勤続年数30年の場合は1,500万円まで退職金を非課税で受け取ることができます。
② 1/2課税(非課税枠を超えた分もさらに半分に)
退職所得控除額を差し引いた後の残りの金額に対して、さらに「1/2」を掛けた金額のみが課税対象となります。
課税対象となる所得 =(3,000万円 − 退職所得控除1,500万円)× 1/2 = 750万円
このように、実質的な課税ベースを半分に下げてくれる制度は、給与や役員賞与には一切ありません。
③ 分離課税(他の所得と合算せず個別に計算される)
退職所得は通常の給与所得や事業所得、不動産所得とは異なり、その年の他の所得と合算されません。
退職所得のみに対して個別に累進税率が適用されるため、税率が不当に高くなるのを防ぐことができます。役員報酬を多く取っている年であっても、退職金は低い税率レンジで受け取ることが可能なのです。
2. 経営者が準備すべき「3つの退職所得」
退職所得が税務上優遇されていることは前述の通りです。そして、一定の条件をクリアすれば、「複数年で異なる支払先から受け取った退職所得」についても、それぞれの受け取り時に退職所得控除(非課税枠)や1/2課税のメリットを適用することができます。
小規模企業の経営者であれば、あらかじめ以下の「3つの退職所得」を作り出し、賢く分散して受け取るプランを組むのが賢い節税戦略です。
- 法人(自社)からの役員退職金: 複数社を所有している場合は、それぞれの法人から受け取ることが可能です。
- 小規模企業共済の一時金: 国の機関が運営する経営者のための退職金積み立て制度です。掛金全額が所得控除になるため、現役時代の節税にも極めて有効です。
- 確定拠出年金(iDeCoや企業型DC)の一時金: 税制優遇を受けながら老後資金を準備できる仕組みです。
役員賞与(ボーナス)で一括受給した場合との比較
仮に、長年会社にプールした利益を、通常の「役員賞与」として受け取る場合と、「3か所から複数年にわたって退職所得(一時金)」として受け取る場合では、手元に残るキャッシュにどれほどの差が出るでしょうか。
| 受取方法の比較 | 額面(総受取額) | 課税対象額 | 実質所得税率(目安) | 社会保険料の有無 |
|---|---|---|---|---|
| 役員賞与として一括受給 | 3,000万円 | ほぼ全額(総合課税) | 約45%〜50% | あり(高額) |
| 3つの退職所得に分散受給 | 3,000万円 | 退職所得控除適用後 × 1/2 | 約10%〜15% | なし(0円) |
このように、実質的な所得税率で30%以上もの差がつく場合があるため、なるべく早い段階からプランニングをしておくことを強くおすすめします。役員報酬や役員賞与で受け取る場合、社会保険料の負担も大きく増えるため、実際の最終キャッシュフローはさらに劇的な差になります。
しかし、退職所得による節税は効果が大きすぎるため、当然ながら「規制(注意点)」も多く設けられています。そして、2026年(令和8年)に、このスキームを揺るがす最大の改正が行われました。
3. 【2026年1月改正】退職所得控除の「二重取り」を防ぐ新ルール(5年→10年延長)
複数の退職金を受け取る場合、退職所得控除(非課税枠)を何回もフルで「二重取り」されるのを防ぐため、法律で**「重複期間の調整計算」**が定められています。
これまでは、この調整から逃れるための「抜け道(いわゆる5年ルール)」が存在したのですが、2026年1月1日以降の受給から、このルールが大幅に厳格化されることになりました。
改正前(〜2025年12月31日受給まで)の「5年ルール」
従来のルールでは、先にiDeCoや企業型DC(確定拠出年金)を「一時金」で受け取り、その受け取った年の前年以前4年以内(つまり実質5年以上空けて)に会社の退職金や小規模企業共済を受け取る場合、重複期間の調整計算の対象外(免責)とされていました。
つまり、「60歳でiDeCo(一時金)を受け取り、65歳で会社からの役員退職金を受け取る」というように5年間空けるだけで、両方の退職所得控除を満額二重取りすることができたのです。
改正後(2026年1月1日以降受給〜)の「10年ルール」
2026年(令和8年)1月1日以降に支給される退職金については、この「前年以前4年以内」という免責期間が、「前年以前9年以内(実質10年以上空ける)」へと一気に延長されます。
60歳でiDeCoの一時金を受け取り、65歳(5年後)に自社からの退職金を受け取る場合、2026年以降は「10年ルール」に引っかかるため、自社退職金を計算する際にiDeCoの加入期間と重複していた期間分の退職所得控除額がバッサリと差し引かれて(減額されて)しまいます。これにより、自社退職金にかかる所得税が大幅に増えてしまう結果になります。
重複調整を避けて、再び自社退職金で満額の退職所得控除の枠を利用するためには、**確定拠出年金を受け取ってから「10年以上」空けて自社の退職金を受け取る**必要が出てきます。
もう一つのルール:「20年ルール(19年空け)」は据え置き
逆に、「自社の退職金(または小規模企業共済)を先に受け取り、後からiDeCo(確定拠出年金)を一時金で受け取る」という順序の場合、退職所得控除を重複調整なしで満額受けるためには、**「前年以前19年以内(実質20年以上空ける)」**必要があります。この20年ルールについては、2026年の改正でも変更はなくそのまま維持されます。
2026年改正を踏まえた今後の「出口戦略」はどうする?
この改正により、これまでの「iDeCoを60歳で先にもらい、65歳で会社を引退して退職金をもらう」という王道パターンは、増税を避けるためには使えなくなります。今後は以下のような戦略的な選択が必要です。
- 確定拠出年金を「一時金」ではなく、一部または全部を「年金形式(雑所得扱い)」で受け取り、退職金と時期をずらす。
- 退職金を50代などの早い段階で受け取り、そこから20年空けて70代後半(DC一時金は75歳までに受け取る必要がありますが、勤続年数の状況を見て計画)でDC一時金を受け取る(※役員の退職金を支給する場合、税務上の退職事由や過大役員退職金の否認リスクに注意が必要です)。
- 退職所得控除が多少減額されるペナルティを受け入れてでも、社会保険料のかからない「1/2課税+分離課税」のメリットを優先して一時金で一括受給する。
退職所得を複数活用した節税スキームは、時期のズレや金額によってシミュレーションが複雑を極めます。会社経営をされている方は、ぜひ一度、札幌で節税に強い税理士である当事務所へご相談ください。2026年の改正に完全対応した、貴社だけの最適解をシミュレーションいたします。
4. 札幌で「起業・開業・創業」される方が早い段階から退職金戦略を考えるべき理由
「退職金なんて老後の話だから、まだ関係ない」と思っていませんか?実は、札幌で起業・開業・創業を目指す方にとって、この退職金戦略(出口戦略)は「一期目」から考えるべき極めて重要な課題です。
なぜなら、個人事業主のままでは、どれだけ長く働いても自分自身に「退職金」を支給することはできないからです。しかし、適切なタイミングで「会社設立」や「法人化(法人成り)」を行うことで、自分自身を会社の「役員」とし、将来的に優遇された退職所得を受け取れるスキーム(法人からの退職金、小規模企業共済、確定拠出年金)を構築することが可能になります。
札幌のビジネス環境を踏まえ、個人事業としてスタートすべきか、それとも最初から会社設立をして退職金を含む節税スキームをフル活用すべきかは、事業の立ち上げ期に慎重に見極める必要があります。当事務所では、あなたのビジネスプランに合わせ、最も税制メリットと資金繰りを最大化できる起業スタイルをご提案しています。
独立・開業をお考えの方は、まずは下記の起業家支援の特設ページをご覧いただき、具体的なイメージを膨らませてみてください。
札幌での起業・開業・創業を成功に導く!創業補助金・助成金の活用法と起業支援詳細はこちら
5. 創業期における「札幌での創業融資・創業補助金」との相乗効果
退職所得を準備すること(特に「小規模企業共済」への加入や各種積立)は、将来の節税に留まらず、創業期の最大の課題である「資金繰り」においても劇的な効果を発揮します。
① 「札幌 創業融資」の審査に有利に働く
これから札幌で創業融資の獲得を目指す際、日本政策金融公庫などの金融機関は「経営者の計画的な資産形成の実績」を非常に高く評価します。小規模企業共済などに加入して毎月確実に掛金を積み立てている実績は、「計画的で財務意識の高い経営者」であるという強い信用情報になります。手元資金の証明や自己資金の補強としても有利に働きます。
② 頼れる無担保・即日の「契約者貸付制度」
万が一、創業期に急な資金ショートが発生した際、小規模企業共済に加入していれば、積み立てた掛金の範囲内で、担保・保証人なしで即座に事業資金の貸付(契約者貸付)を受けることができます。銀行融資よりもはるかに早く、無担保・低金利でキャッシュを調達できるため、経営者にとってこれ以上ない安心のセーフティネットとなります。
③ 「札幌 創業補助金」を活用して自己資金を最大化する
札幌市では、特定創業支援等事業の証明書を活用した「さっぽろ新規創業促進補助金」や、国が実施する「小規模事業者持続化補助金」など、起業家が返済不要で受け取れる札幌の創業補助金が非常に充実しています。
補助金を活用して初期投資を抑え、浮いた手元キャッシュを小規模企業共済や将来の役員退職金の原資として積み立てていく。この「融資 × 補助金 × 退職金積立」の黄金サイクルを回すことこそが、創業期から会社を軌道に乗せる最大の近道です。
6. まとめ:札幌で節税に強い税理士と共に、長期的なCF(キャッシュフロー)の最大化を
退職所得を複数組み合わせて活用するスキームは、中小企業の経営者にとって最強の合法的な節税手法です。しかし、ご紹介した通り、2026年(令和8年)の「10年ルール」への税制改正など、法規制は日々目まぐるしく変化しています。
「昔ネットで調べたから大丈夫」「知り合いの社長がこうしていたから」と我流でタイミングや金額を設定してしまうと、後から税務調査で否認されたり、退職所得控除を大きく減額されて思わぬ課税を受けるリスクがあります。
だからこそ、創業融資から日々の経理のDX化、そして将来の出口戦略(退職金設計)まで、トータルで相談できるパートナーが不可欠です。
関口達也税理士事務所は、札幌エリアで数多くの起業家・経営者様のパートナーとして、「節税等によるキャッシュフローの最大化」と、マネーフォワードやfreeeなどのクラウド会計をフル活用した「徹底的な経理効率化(DX)」を強みとしています。
無資格の担当者が割り当てられることは一切なく、経験豊富な税理士自身がすべての面談を100%直接担当いたします。
札幌で起業をお考えの方、会社の財務体質を根本から強化したい経営者の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。まずはお困りのこと、将来の展望を無料相談にてお聞かせください。




